再生医療等製品の品質保証についての雑感【第72回】

2025/04/11 再生医療

水谷 学

課題解決のための運用について議論する

第72回:細胞製造の品質マネジメントシステム (2) 
~ 「課題解決のための運用」に必須なもの ~

はじめに
 前回のお話しで、細胞製造の品質マネジメントシステム(QMS)構築において、ポイントは、1) 製造工程開発プログラム構築のための課題、2) 治験製品が商業生産の実製造時と相同の製品を提供するための課題、3) 商業製造において安定した品質を実現するための課題、とお話ししました。これら3つのポイントでは、それぞれ達成すべき項目は異なりますが、目標とする品質を達成して製品を実現するために必要な技術あるいはその考え方は同じと考えます。

● 各課題の解決において何を理解すべきか
 以前、QbDの実質は、QMS七原則の1つ、プロセスアプローチであるとのお話ししました(第61回)。また、その中で、製造管理者が要求される重要管理事項は、プロセスコントロール(PC)であるとお話ししました(第44回)。PCでは、インプロセスのモニタリングを行い、細胞の成育等、プロセスが予め想定した状態を確保していることを確認できていることが理想です。その理想型を追求したものがデザインスペース(DS)であり、製剤におけるリアルタイムリリースです。細胞製品の製造は、製剤ではなく、原薬製造に相当するので、PCの制御は非常に煩雑となりますが、最終製品の品質規格の設定と評価が困難な細胞製品においては、モニタリングによるプロセス監視のシステム構築は必須と考えます。
 プロセスの監視は、システムの改善、薬機法では是正・予防処置(CAPA)につながる重要な活動です。既に改正GMP省令では、第11条に安定性モニタリングに関する項目が追加され、品質への影響を評価するとともに必要な処置が義務付けられています。(GCTP省令は改正が遅れています。)モニタリングの要求は、規制要件では、最終製品に限定されますが、適切な製造と品質の管理の実施のためには、全工程を通じて、必要なモニタリングプログラムを構築し、監視を行うことは不可欠と考えます。

 

 

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

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