QAを助けたい【第2回】
総括製造販売責任者の責務と経営陣との対話
(前回からの続き)
田中: 伊井様が、総責になられた際のお話を伺いたく存じます。当時はGQP省令が施行されてからまだ日が浅い時期で、総責の役割も手探りだったと思いますが、ご苦労はありましたか?
伊井様: おっしゃる通りです。当時、日薬連の主催の総責会議に参加したのですが、そこで非常に印象的だったのが、ある総責の方が「社長から『お前の顔は見たくない』と真顔で言われた」と話していたことです。
その理由は、総責が良い話を持ってくることは稀で、ほとんどが回収のようなネガティブな報告だからとのことでした。
田中: 経営陣に品質や安全の重要性を理解してもらうのは、本当に大変なことだと思います。
伊井様: 私自身も反省すべき点があります。問題があった時、例えば回収や大きな問題があった場合は、直接、社長に報告が上がっていましたが、日々の問題のない平時において、もっと社長とのコミュニケーションをとり、日頃から品質・安全性の状況を社長にお伝えする努力が足りなかったと思います。
田中: GMP省令ではマネジメントレビューが義務付けられましたが、GQP省令にはまだありません。その点で、以前の職場で「こうしておけばよかった」と感じることはありますか?
伊井様: やはり、悪い時だけでなく、日々の状況についても報告すべきだったと思います。そして、品質・安全性に関する業務が何をしているのか、そしてその現状を、社長等にもっと分かりやすくお伝えしなければならなかったな、と反省しています。
田中: ただ、代表者や責任役員の方は多忙で、なかなか時間が取れないという現実もあります。
伊井様: ええ。ですが、有難いことに法令遵守体制の整備を目的とした三役通知が出たことで、状況は大きく変わり、製販三役の重要性をしっかりと認識いただき、製販三役の責務・重要性等について社内に周知をしていただきました。
更に、以前、大阪府の薬務課長が社長と直接面談してくださったことがあったのですが、その事前準備を通じて品質・安全性に対する社長の認識が格段に上がり、非常にありがたかったです。
田中: その後の法改正や不正事案を受け、行政からも責任役員に対し、調査への同席やリソース配分に関する説明を求めるなど、良い意味でのプレッシャーがかかるようになりました。
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