GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第73回】

 

データインテグリティ(Data Integrity)


1.データ改ざん

 データインテグリティを確保することについてGMP省令が改正され、厳しく求められた。データ改ざんを防止するだけでなく、記録をする際に間違いを防止することも重要である。データ改ざんは、試験検査などで不適となり、逸脱処理とすべき事例を隠そうと、データを書き換えすることになる。医薬品以外の製品でも、多く発生している。電機や車検、食品などマスコミで耳にする事例は多い。医薬品でも、当局から業務停止などの処分を受けた施設に、データ改ざんが行われていたと報道があった。会社組織において、その担当者が単独で行ったわけではないが、経営陣が責任を取らないこともある。問題な点は、データ改ざんにより、被害を受けるのは、患者など市民が健康面など身体に被害を受け、健康が損なわれることにある。

 データ改ざん事例として、昔、試験担当者が単独で行ったとされる事例がある。試験を実施できるものが限られていて、その担当者に試験が集中して、すべての試験を行うことができなかったため、試験検査結果を偽造し、試験成績書を捏造したものだった。検体がそのまま消費されずに残っており、試験検査で使用する機器や設備が使用された記録もなかったので、発見された事例であった。作業者に負担がかかり、こなすことができなくなり、起こしたのだが、試験の実施が適切に行える環境を設ける必要がある。また、試験検査結果の確認だけでなく、試験検査を手順に沿って、適切に行ったことを確認する照査体制も必要である。

 組織として、データねつ造は、試験検査結果が不適合となり、不適合品を出荷しないと、客先への納品が遅れてしまう際に起こすことがある。また、食品などにおいて、期限より長く保管したしまい、期限切れのなったものの保管日などを偽ることもある。長期保管することで、その製品の品質が劣化し、健康被害を招くこともある。医薬品の長期保存により、製品品質が劣化し、病気の治療ができなくなり、疾病を悪化させることにもつながることになる。

 業務実施者が記録を描き間違えるなどにより発生する事例もある。原料の間違い、操作の間違え、製造方法や試験検査方法を間違えることで逸脱が発生することもある。その間違えを隠すため、データ改ざんを行い、本来、逸脱であったデータそのものを間違えて、記録することもある。正しく記録するには何をすべきかを考えることが必要である。試験検査を実施し、結果を得るまでの時間が予定より長くかかることで、試験検査を行わずに、データを作成した事例も過去にあった。また、標準品や試薬などがなく、それらを習得するまでに日数がかかり、データを偽造した事例もある。試験検査担当者が、勝手にやったこととされたが、試験検査を事業部門や企業として、担当者任せにし、管理監督していなかったことで、発生した事例である。

 データ改ざんが起こるリスクを事前に考え、その防止策を立てなければならない。試験検査においても、製造管理においても、QA部門において、データ改ざんは起こり得る。部門ごとに検証し、互いに管理監督し、不正が起こらぬ環境づくりが必要である。互いに認め合うことは必要だが、相互の環境を維持し、不正が起こらぬ管理体制を維持しなければならない。
 

 

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