医薬品の技術移転のポイント【第25回】

11.技術移管後の品質保証

1)自社に技術者がいない場合
2)品質トラブルを防ぐための委託先とのコミュニケーション
3)品質トラブルの共有化の仕組み構築
4)製販が委託先に期待すること

1)自社に技術者がいない場合
 製剤や分析の技術者が自社にいないケースが増えています。それは生産を切り離した当然の結果です。その技術は委託先の製造所にあります。その結果、実際の品質保証は委託先であり、製販ではお任せ状態です。いわゆるブラックボックス化です。それでは製販として品質保証の責任を果たしていません。そのためには製販のQAがその製品の製造/分析技術における品質保証のポイントを理解している必要があります。
 剤型によって品質保証の注意事項が異なりますので剤型のベースになる品質の注意点を理解しておくことになります。

  • 注射剤の無菌性
     最終滅菌がオーバーキルの条件であれば、設備のバリデーションの確認や滅菌が確実に行われたことを確認する程度で、それほど心配しなくても大丈夫です。しかい昔に承認を取得した製品はオーバーキルになっておらず、100℃×60分、115℃×30分の殺菌レベルのままの場合があります。その場合では移管時は無菌操作法による製造方法を求められる場合があるので注意が必要です。また無菌操作法の場合、製造ラインの培地充填バリデーションなども求められており、注射剤の無菌保証についての知識が必須になります。山口県の製造所がFDA査察でWarning Letterをもらったのは、無菌充填時の逸脱対応の不備が原因でした。この指摘内容を十分理解しておくことが必須です。
  • 注射剤の不溶性異物試験
     海外から製剤バルクを輸入する場合、必ずと言っていいほど問題になるのが不溶性異物試験です。なぜなら不溶性異物試験は3極(日米欧)の局方試験は統一されていますが、判定基準が、容易に認める異物がない(溶液)/明らかに認める異物がない(用時溶解)と曖昧な基準であるため、試験者ややり方によって大きく変わります。一般的に日本では海外では問題にならない小さな異物まで医療現場で見つけます。そのため、苦情や製品回収になることが今も起きています。海外では問題にならないため、日本で問題になっている異物を減らす技術を持っていません。そのため海外製造所に「異物を減らして欲しい」と言っても技術がないので難しいです。QAが注射剤の不溶性異物に関して十分理解しておくことが必要になります。

 

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