WHO / TRS 1044 Annex 6: WHO good practices for research and development facilities of pharmaceutical productsの注釈付き対訳【第1回】

2023/03/31 レギュレーション

今回は、Background、Contents、第1章「Introduction」ならびに第2章「Scope」の対訳を示す。

本対訳のはじめに
本対訳は、2023年2月に「WHO Expert Committee on Specifications for Pharmaceutical Preparations(Fifty-sixth report)、別名WHO Technical Report Series 1044TRS 1044)」として発行された研究報告書の中の一追補のガイドライン「Annex 6: WHO good practices for research and development facilities of pharmaceutical products(医薬品の研究開発部門についてのWHOのグッドプラクティス)」の全対訳であり、5回連載の予定である。

本ガイドラインは、筆者の認識では、今回が初発のガイドラインである。ヒト治験に入る前にあたる前臨床試験用および非ヒト用使用のための開発製品に対するGood Practices(グッドプラクティス)についてのガイドラインである。背景には、COVID-19パンデミックに対する迅速な治療薬・ワクチンの開発ということがあり、迅速な承認には、しっかりとした(信頼性の高い)データが必要になるということからだと推測する。逆に言えば、ヒトに使わないから“いい加減”で良いなんてことは在り得ない(許されない)。医薬品開発という大命題、ひいては将来の申請用データに直接/間接的に用いられるということを意識してほしいということだと認識している。

本ガイドライン、敢えて“Good Practices(グッドプラクティス)”と称している理由は、ヒト用ではない薬物(医薬品)の製造においては、必ずしも“GMP”を規制要件としてかけらないという事情があるため*1、GMPという表現が使えないという単純な理由であると推測する。ご一読いただければ分かると思うが、内容的には、もろGMPである。
*1:動物用医薬品や食品についてのGMPを規制要件としている国もある。
 
読者の皆さんがどう思うかは測り兼ねるが、本ガイドライン、今までGMPなんて意識していなかった研究開発部門が対象である。“research and development facilities”を直訳すれば、「研究開発施設」となるが、本ガイドラインで謳っている内容は、明らかに「研究開発部門」であり、ハードウェアとしての建物ではない*2。筆者の個人的感想を言えば、最初にドラフト読んだ際に“衝撃”を受けた。「これは大変な事態になる。とうとう、ここまで来たか!?」という内容である。
*2:本ガイドラインのタイトルにある“facilities”の意味については、対訳タイトルの注釈として付記しているので、そちらを参照されたい。
 

なお、本対訳に際しては、出来る限り直訳を意識したが、英文としての受動態表現や日本語的に馴染みのうすい表現などもあり、さらにはGMPに造詣の深い者でないと分かり難いといった文章もあることから、筆者なりの解釈を踏まえて意訳している部分があることをご容赦いただきたい。
必要に応じては、理解し易いように条項内に青字で追記を施し、また必要に応じては、各事項に「《注》」として本邦の治験薬GMP基準や治験関連の手続きなども踏まえた注釈を施している。
ただ、対訳自体が間違っている可能性もあり、筆者として不明瞭な点もあるため、あくまで自身で英語原文を読んで理解することを強くお勧めする。そのような点をご理解いただき、ご活用いただければ有り難い。

 

 

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執筆者について

古田土 真一

経歴

GMDPコンサルタント(Pharmaceutical Quality Science Advisor)

1979年より田辺製薬(株)(現田辺三菱製薬)にて合成探索研究、プロセス・工業化研究、CMCプロジェクト開発、治験薬QA、コーポレートQAを歴任。2008年より武州製薬(株)にてQA/QCの管理監督。2009年より中外製薬(株)にて治験薬・医薬品のQA業務・品質システムを改革推進。2013年よりアステラス・アムジェン・バイオファーマ(株)にてCMC・Supply Chain・QAの長として業務構築。2015年より三井倉庫ホールディングス(株)にてヘルスケア製品の事業開発アドバイザーとして業務構築。2015年9月より (国立研究開発法人) 国立精神・神経医療研究センター/トランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部アドバイザーとして医薬品開発を、また2022年11月からジェダイトメディスン(株)の品質アドバイザーとして医薬品上市を支援中。
医薬品の開発から上市・保管・流通までを品質の側面から一貫した経験を活かし、GMDPコンサルタントとしてGood Practicesの支援依頼に対応中。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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