WHO / TRS 1044 Annex 7: WHO good manufacturing practices for investigational productsの注釈付き対訳【第1回】

2023/02/24 レギュレーション

今回は、Background、第1章「Introduction」、第2章「Scope」、第3章「Glossary」の対訳を示す。

本対訳のはじめに
本対訳は、2023年2月に「WHO Expert Committee on Specifications for Pharmaceutical Preparations(Fifty-sixth report)、別名WHO Technical Report Series 1044(TRS 1044)」*1として発行された研究報告書の中の一追補のガイドライン「Annex 7: WHO good manufacturing practices for investigational products(治験薬についてのWHO GMP)」の全対訳であり、5回連載の予定である。
*1:本報告書には、11点のAnnexesがアタッチされている。
 

本Annex 7は、WHOによる治験薬のGMPガイドラインとして初発された、1996年の「WHO Technical Report Series, No. 863(Annex 7)」の中の一部「Investigational pharmaceutical products for clinical trials in humans」として発行されて以来の改訂版にあたる。今回の改訂履歴を振り返れば、2020年11月に素案としてパブコメが開始され、翌2021年7月に改訂ドラフトが公開され、2022年8月31日付けで最終化されている。

あくまで筆者の全体印象であるが、改訂前の1996年版のコンセプトをベースに、「PIC/S GMP Annex 13(Manufacture of investigational medicinal products)」における各要件をWHOという世界的な保健機関という立場で咀嚼し、さらに医薬品開発という観点から、同時に発行された「Annex 6: WHO good practices for research and development facilities of pharmaceutical products*2と共に、ICH Q10(Pharmaceutical Quality System (PQS):医薬品品質シスム)を強く取り込み、現在の状況における“(品質の観点における)治験薬の在り方”を示しているように思える。
*2:Annex 6については、本対訳の連載に続いて、全対訳を掲載していただく予定である。
 

本邦における、2008年7月に発出された薬食発第0708002号「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について」との比較においては、本邦基準が1996年版のコンセプトをベースとして組み立てられていることもあってか、この治験薬GMP基準も参考にしていることが窺え、今回のWHO改訂版とはかなり整合し、結果的にはより近づいたと言える。

なお、本対訳に際しては、出来る限り直訳を意識したが、英文としての受動態表現や日本語的に馴染みのうすい表現などもあり、さらにはGMPに造詣の深い者でないと分かり難いといった文章もあることから、筆者なりの解釈を踏まえて意訳している部分があることをご容赦いただきたい。
必要に応じては、理解し易いように条項内に青字で追記を施し、また必要に応じては、各事項に「《注》」として本邦の治験薬GMP基準や治験関連の手続きなども踏まえた注釈を施している。
ただ、対訳自体が間違っている可能性もあり、筆者として不明瞭な点もあるため、あくまで自身で英語原文を読んで理解することを強くお勧めする。そのような点をご理解いただき、ご活用いただければ有り難い。

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執筆者について

古田土 真一

経歴

GMDPコンサルタント(Pharmaceutical Quality Science Advisor)

1979年より田辺製薬(株)(現田辺三菱製薬)にて合成探索研究、プロセス・工業化研究、CMCプロジェクト開発、治験薬QA、コーポレートQAを歴任。2008年より武州製薬(株)にてQA/QCの管理監督。2009年より中外製薬(株)にて治験薬・医薬品のQA業務・品質システムを改革推進。2013年よりアステラス・アムジェン・バイオファーマ(株)にてCMC・Supply Chain・QAの長として業務構築。2015年より三井倉庫ホールディングス(株)にてヘルスケア製品の事業開発アドバイザーとして業務構築。2015年9月より (国立研究開発法人) 国立精神・神経医療研究センター/トランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部アドバイザーとして医薬品開発を、また2022年11月からジェダイトメディスン(株)の品質アドバイザーとして医薬品上市を支援中。
医薬品の開発から上市・保管・流通までを品質の側面から一貫した経験を活かし、GMDPコンサルタントとしてGood Practicesの支援依頼に対応中。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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