【FDAによる一貫生産の奨励】ASTROM通信<99号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2016.6.1】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー


こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

今日から6月。そろそろ梅雨入りになりそうですが、いかがお過ごしですか?

さて今回は、2016年4月12日にFDA Voiceに掲載された、FDA医薬品評価センター(CDER)の製剤品質オフィス副所長Lawrence Yu博士の“一貫生産”に関する記事を取り上げたいと思います。

FDA Voiceとは、FDAのリーダやスタッフがニュースや通知やさまざまな情報を発信しているFDAの公式ブログです。
アメリカ国内の製薬業界や医療に関する情報や、FDAの規制動向等を知ることができるなかなか興味深いサイトです。

最後までお付き合いいただければ幸いです。

<原文>
http://blogs.fda.gov/fdavoice/index.php/2016/04/continuous-manufacturing-has-a-strong-impact-on-drug-quality/?source=govdelivery&utm_medium=email&utm_source=govdelivery


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記事の概要
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数十年の間、ほとんどの薬は、一連の工程の終了と開始により作られる「バッチ生産」の技術を用いて製造されてきました。しかし、各工程における停止は、欠陥やエラーの発生の可能性を増すだけでなく、非効率と遅延の原因となっていました。
しかし、今日の「一貫生産」という新しい技術は、連続した途切れのない工程を通じて、より速く、より品質の信頼性のある製品の製造を可能にします。

もちろん、速さだけが一貫生産の品質を向上させるわけではありませんが、工程間の中断の除去や、バッチ工程の終了・開始間のヒューマンエラーの可能性の減少により、一貫生産は、より信頼性があり安全なのです。

質の高い製品をより効率的に製造することは、製造コストを下げ、消費者がより低価格の薬を得られることになるでしょう。また、一貫生産は、メーカが需要の変化により迅速に対応できるようになるため、薬不足の防止にも貢献できる可能性があります。

我々は、ますます多くのメーカが一貫生産に向けて取り組みつつあるのを見ています。
Vertex社は、2015年7月に承認を受け、Orkambiの一貫生産を行っています。
また、FDAは、Janssen Product,LPのエイズ感染治療薬Prezistaについて、バッチ生産から一貫生産への変更を初めて承認しました。
製造向上のための企業の努力は、FDAが最近発出したドラフトのガイダンス
(Advancement of Emerging Technology Applications to Modernize the Pharmaceutical Manufacturing Base Guidance for Industry)によって促進されています。

医薬品メーカにとってバッチ生産から一貫生産に移行するのは容易ではありませんが、大きなメリットがあります。FDAは、製薬業界の他のメーカに対し同様の努力を検討するよう奨励しています。

進歩は適切な時期にやってきます。私たちが使っている医薬品は変化しています。私たちは、薬を必要としている患者に、患者の必要とする独自の特徴を持った薬をより早く提供する精密医薬品の時代に入っています。FDAは、アメリカで使われる医薬品の品質を向上させる様々な方法の1つとして、一貫生産の進歩の奨励を続けていくでしょう。

<ドラフトガイダンス>
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM478821.pdf


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まとめ
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このブログから、バッチ生産に比べて工程毎に途切れることがないため効率的でヒューマンエラーの入り込む余地が少ない一貫生産をFDAが奨励していることが読み取れます。
一貫生産は、ある程度ラインを固定化することになるので、需要の変化に迅速に対応でき、薬不足の防止にも貢献できるという説明には多少疑問を感じましたが、バッチ生産に対する一貫生産のメリットは十分理解できます。
ただ、中小の製薬企業が一貫生産に対応していくのは簡単なことではありません。
日本は海外に比べて規模の小さい製薬企業が多いため、近い将来、FDAの一貫生産奨励の方針の影響を受ける可能性があるかもしれません。
ドラフトガイダンスの正式発出など、今後の動向に注意する必要がありそうです。
 

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