医薬品の技術移転のポイント【第16回】

8.レギュレーション上の品質トラブル

 従来品質保証はGMPと品質管理を行っていればよかったです。ところが2013年の薬機法改正で、製造に関するレギュレーションが大きく変わりました。

  • 製造販売承認書に下記を記載
    • 製造場所、保管場所、外部試験機関
    • 詳細な製造方法記載
    • 製造方法は一部変更申請事項と軽微変更事項に申請者自らが判断して記載
       ただし、後日のGMP適合性調査若しくは一部変更申請時にその分類が適切でないと判断されたときはその変更は無効となり、無効な記載方法で製造したものは出荷停止あるいは回収になる場合があるとの警告が事務連絡でなされ、今はそれが実践されています。
    • 既存品で記載整備(製造方法記載など)を行った後の変更時は、内容により軽微変更もしくは一部変更申請の手続きを適切に行う。
  • 原薬の承認制度廃止
    • 製剤の承認書に原薬の情報記載
    • MF制度導入
  • 外国製造所認定制度新設
    • 新規であれば外国製造所認定申請が新製品の申請に必要
    • 5年ごとの更新
  • GMP適合性調査
    • GMP適合が承認の必須条件で実査か書面調査
    • GMP適合性調査申請(新規は製造所、保管場所、外部試験機関)
      これに適合しないと新規申請であれば承認されない。
    • 5年ごとのGMP適合性確認(製造所、保管場所)
      これらのレギュレーション変更が、その後の大きな品質問題の発端になっています。

 当局が承認書の齟齬≒製品回収を行ったことで製品回収が増えました。また無通告査察の増加で不備が当局により発見されるなどもあり、GMP不備による製品回収、安定性試験結果対応不備による回収も増えました。
技術移転においてもリスクを減らすためにはこれらの仕組みをよく理解して対応していく必要があります。これまでの技術移管は品質の観点とGMP対応(バリデーション/安定性試験など)、ドキュメント管理だけで良かったのですが、それにプラスしたレギュレーション対応が必要になりました。ではそれらを事例から学びたいと思います。

1)新製品開発時のレギュレーション対応不備(海外の製造所/保管場所)
 新製品の申請を研究開発が進めていました。2005年の承認書等への法改正を研究開発部門は熟知していませんでした。新製品の申請を翌月に控えて、新製品の製造所に新規製造所があれば「外国製造所認定」の申請書提出後に新製品の新規申請ができることがわかりました。そこで、外国製造所認定に必要な情報を製剤製造所から入手するために依頼したところ、断られました。理由は「提供する契約になっていない。なぜ関係ない会社に製造所情報を提供しなければならないのか」とのことでした。日本の制度の説明をしても、それはお宅の事情で弊社は関係ないとのことでした。海外は契約社会なのです。

 この新製品は下記の製造になっていました。

  • 日本国内での新規申請会社 A社
  • 米国の原薬製造&製剤の無菌溶液製造、包装会社 B社
  • バイアルに無菌溶液を充填 C製造所

 A社とB社は契約を結んでいました。B社は充填に関する契約をC製造所と結んでいましたが、C製造所の製造所情報を提供する契約は結んでいませんでした。とうぜん、A社とC製造所の直接契約はありません。新製品の申請予定日が1か月後に控えていますが、申請できません。この時点で、本社QAに研究開発部門から協力依頼が来ました。新製品の申請に関する外国製造所申請は研究開発部門の任務でした。研究開発部門は承認取得が任務です。
2005年の承認書などのレギュレーション変更(軽微変更&一部変更申請など)は本社のQAで行っていました。よって既存品の外国製造所認定は本社QAで行っていました。製造販売承認書の製造に関する軽微変更/一部変更申請を薬事部か本社QAで行っている会社が多いと思います。薬事部長は当時、筆者(品責、本社QA長)より年配の方でした。薬事部長が「薬事部が製造に関することを知っているわけがないだろう。それはQAの仕事だ」と言われ、押し切られ本社QAで行っていました。薬事手続きではと思いましたが、仕方がありません。ただ、この時引き受けたことは大きな学びになりました。この時の経験を活かして退職後に「製造方法の軽微変更&一部変更申請」のセミナー講師も行っています。
 

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