エッセイ:エイジング話【第34回】

品位と品格

~品位ある振舞い・品格ある横綱像について道(どう)たるゆえんを取り上げます~

 品位ある人は役割を全(まっとう)し、更に他人を思いやる気持ちを身に着けた人を云います。生い立ちや立ち位置とも係わります。品位があるなしは、周りが決めることで自ら名乗ることはありません。
 作法どおりに茶を点てることができ、振舞いが流派(りゅうは)の師範(しはん)であっても、茶を飲む人を思う気持ちとは異なる次元であり、振舞いから先が道(どう)なのかと思います。
 柔術(じゅうじゅつ)と柔道は異なり、オリンピック柔道は短い時間で勝負(かちまけ)を決着させるため、また体重階級制であることから、講道館(こうどうかん)柔道にはある弱者への配慮はありません。勝敗をも超える概念が道たるゆえんかと思います。
 おもてなしを、2020年東京オリンピックを誘致するときにスローガンとしました。おもてなしも相手を思う気持ちから始まりますが、お仕着せでないことが大切です。
 選手村で朝食に残ったおにぎりが大量廃棄されたとニュースで聞きました。前日に選択を聞くておくとか、お仕着せでなく相手の好みも配慮しつつドライな対応もありだったかと思います。おもてなしと言いながら主催者側の自己満足を垣間見ました。
 相撲解説者で元横綱北の富士関は、スポーツ雑誌のコラムに「今までは白鵬の理解者と自負してきたが、この日(記事の2日前)を限りでやめることにした」「愛想がつきた。44回も優勝してまだあのような汚い手段で優勝したいのか」と憤慨している記事を読みました。(2021/07/19日刊ゲンダイDIGITALより)
 元北の富士関が求めるのは横綱の品格(ひんかく)です。格下に勝ち続けるのが横綱の役割であって、併せて相手へ配慮した技で勝たねばならない横綱像を白鵬へ求め続け、愛想がつきたと、つい漏らしたのでしょう。

品格について語る元北の富士関(左)と“横綱の品格”を問われて(右)
NHK特番:横綱 白鳳“孤独”の14年 (2021年10月17日放映TV画面より)

 

 この記事から2ヶ月後に白鳳が引退を表明すると、元北の富士関は小柄な入幕当時の白鳳の姿を振り返り、その精進を称え品位ある解説者としての言葉を投げかけられました。
 白鳳は引退後に出演したTVの特番では、品格ある歴代の横綱へ憧れ、「如何に日本人に好かれる横綱になるか」を自問し、先に引退した稀勢の里に敗れた大一番の後には、場内から万歳コールが起こったことを思い返し悔し涙を浮かべました。

白鳳/稀勢の里一番の立ち合い場面
白鳳/稀勢の里大一番の立ち合い場面
(NHK特番2021年10月17日放映TV画面より)

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