医薬品の技術移転のポイント【第5回】
GMP適合性調査
技術が移転しただけでは十分ではありません。今はレギュレーション対応が必要になります。昔は品目の製造追加は製造所のある都道府県に(生物学的製剤は審査管理課)に届けて許可がおりていました。都道府県の確認も難しいものではありませんでした。書類に不備があればアドバイスしてくれました。ところが2005年の薬事法改正により、製造販売承認書に製造場所、保管場所、外部試験機関の記載と詳細な製造方法の記載が求められました。また、それまでの原薬の承認制度がなくなり、製品の製造販売承認書に原薬についても記載が求められ、特許に関係する場合などは、MF制度により製販に詳細な製造方法を開示しなくてもよいようになりました。
そのため、製造販売承認書を下す場合、事前にGMP適合性調査が行われ、それに適合することが必要になりました。
つまり、技術移転だけでなく、このGMP適合性調査に適合しないと生産して市場に医薬品を供給できなくなったのです。技術移転とGMP適合性調査適合はまさに車の両輪です。
GMP適合性調査の事例から学ぶことによって、注意点を把握してその対応を行うことが重要になっています。
1)GMP適合性調査について
GMP適合性調査で問題が起き、
(1)新製品の承認遅れ
(2)GMP不備による既存品の回収
が起きています。
韓国の2か所の原薬製造所のGMP適合性調査に問題があり、その原薬を使っていた製販に改善命令がだされています。1か所は無菌原薬だったため、その原薬を使った製品まで回収になっています。
今回の指摘事項は、まさに“過去問”で今後、同じ質問がされ、もし同じような不備があると改善命令と製品回収が行われるリスクがあります。そのためには指摘事項の対応を行っておく必要があります。筆者が知るかぎりにおいて、当局の原薬製造所のGMP査察でGMP不備が見つかり、その原薬を使った製品まで回収した初めてのケースではないでしょうか。
韓国の原薬メーカーのGMP適合性調査不適合の事例
・該当製造所(YUHAN CHEMICAL INC)の原薬を使用している製造販売会社にその原薬を使用した製品の回収と改善命令
・該当製造所(SS Pharma Co., Ltd.)の原薬を使用している製造販売会社に改善命令
YUHAN CHEMICAL INCへの製造委託に係る改善命令について
医薬食品局監視指導・麻薬対策課 平成25年14月5日
https://nk.jiho.jp/sites/default/files/nk/document/import/201304/1226572860877.pdf
YUHAN CHEMICAL INCにて製造された注射剤製造用の無菌原薬の品質管理の方法が無菌性を保証できていない可能性があると判断されたものですが、製品となった注射剤自体の品質に問題は確認されていません。ただし、製剤化の工程で滅菌処理がされていない製品※1については念のため、平成25年1月7日に自主回収等※2の対応が行われました。
※1 別記に記載のある、ホスホマイシンナトリウムを使用した製剤。
※2 自主回収は予防的なものであり、個々の製品自体の品質に問題が確認されたものではないことから、各製品とも直ちに重大な健康被害につながるおそれはありません。また、平成25年1月以降、YUHAN CHEMICAL INCで製造された無菌原薬を用いて製造された製品は国内で供給されておりません。
YUHAN CHEMICAL INCの製造委託に係る自主回収
| 製品名 | 有効成分 | 製造販売業者 |
|---|---|---|
| ホスカリーゼ静注用1g※1 | ||
| ホスカリーゼ静注用2g※1 | ホスホマイシンナトリウム | シオノケミカル株式会社 |
| ナスパルン静注用0.5g | ||
| ナスパルン静注用1g | スルバクタムナトリウム | |
| フラゼミシン静注用0.5g※1 | ||
| フラゼミシン静注用1g※1 | ||
| フラゼミシン静注用2g※1 | ||
| フラゼミシン点滴静注用2gキット※1 | ホスホマイシンナトリウム | テバ製薬株式会社 |
| セフォセフ静注用1g | スルバクタムナトリウム | 沢井製薬株式会社 |
| スペルゾン静注用0.5g | ||
| スペルゾン静注用1g | スルバクタムナトリウム | 株式会社ケミックス |
| スルペゾール静注用1g | スルバクタムナトリウム | 東菱薬品工業株式会社 |
※1 自主回収済み
※2 自主回収は、上記の他、株式会社ケミックスの「ユナスピン静注用1.5g」(有効成分:スルバクタムナトリウム、1月7日に回収開始)及び日医工株式会社の「ピシリバクタ静注用1.5g」(有効成分:スルバクタムナトリウム、1月9日に回収開始)についても行われています。ただし、株式会社ケミックス及び日医工株式会社のこれら製品は、既に当該医薬品の製造所を変更するなどの改善措置がとられています。
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