ラボにおけるERESとCSV【第81回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(51)


7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。


■ PPP社 2019/09/13  483 その2
施設:バイオ原薬工場

■Observation 1 B)
バイオプロセス制御装置は温度の上下限アラーム機能を持っているが、アラームを設定していないため規格外の温度になったことをオペレータにアラーム発報していない。バッチ終了後に温度記録計のチャートを確認してはじめて規格外の温度になっていたことが判る。12月8日にバッチが終了し、約1週間の12月14日に製造の監督者(スーパーバイザー)が温度記録計のチャートを確認し、さらに12月27日に製造マネージャーがチャートを確認している。規格外温度になったことをオペレータに即時に知らせておらず、規格外温度をすぐに是正できていない。
 

★解説
指摘1:
バイオプロセス制御装置は温度の上下限アラーム機能を持っているが、アラームを設定していないため規格外の温度になったことをオペレータにアラーム発報していない。

  ⇒
どのような温度制御を行っていたのか判らないが、バイオプロセスであるので昇温工程、定温工程、冷却工程などが組み合わされていたように思える。定温制御だけであれば、制御装置の単純な上下限アラーム機能によりプロセスの温度異常監視を行うことができる。しかし、昇温工程においては上下限アラーム値は固定値ではなく、昇温パターンにあわせダイナミックに変化させる必要があろうかと思う。また、温度変化率のアラームが必要な場合もある。昇温、定温、冷却などの工程が組み合わされている場合、温度アラームを自動発報するためには、ユーザーアプリケーションプログラムにより温度の上下限アラーム値をダイナミックに変化させることになる。この施設のバイオプロセス制御装置がどのようなものであるか判らないが、上下限アラーム値をダイナミックに変化させるようなユーザーアプリケーションプログラム機能を持ち合わせていなかったかもしれない。あるいは、そのようなユーザーアプリケーションプログラムの作成が難しかったため作成しなかったのかもしれない。

いずれにせよ、アラームをオペレータにリアルタイム発報する機能は有益ではあるがGMP規制要件でもDI要件でもない。重要なのは、承認書に記載されたCPPの管理ができているかどうかである。アラーム発報機能がなくても、チャートによりCPPの管理ができるのであればそれでよいということになる。あるいは極端かもしれないが、温度トレンドを目視で監視し続けてもよいはずである。製造プロセスの業務に詳しくない査察官は単純な上下限アラーム機能によりCPPであるプロセスの温度監視ができると信じているかもしれない。

従って、指摘の内容をよく確認し、査察官の心配事に関しどのように現状対応しているか説明しディスカッションするのがよい。どのようにCPPを管理しているかを査察官に判りやすく説明するのが重要である。

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