医薬品品質保証こぼれ話【第45回】
医薬品回収と出荷調整
後発医薬品の“出荷調整”が収まる気配がなく、医療現場の供給不安が深刻さを増しています。沢井製薬は8月19日、出荷調整の対象として高血圧治療薬・カルベジロール製剤など30品目を追加し、調整品目が合計414品目となったと発表しました。後発医薬品の出荷調整に関しては、これまで、日医工、東和薬品など他の後発品大手を含む関連企業から相次いで発表があり、その品目数は各社あわせると優に1,000を超える状況にあると推察されます。その結果、調剤の場においては代替の医薬品さえ確保できない状況を招いています。こういった状況も含め、インド株が猛威を振るいコロナ感染者とその重症患者が急増する中、医療関係者は今、非常に厳しい状況におかれていると言えます。
後発品の出荷調整がここまで拡大している原因としては、後発品の使用の増加に生産が追いついていない、つまり、需要に供給が追いつかない状況が考えられますが、視点を変えると、“後発品の使用率の増加傾向を見据えた生産(増産)体制の整備”が遅れているという見方もできます。そのほかの要因としては、このところの相次ぐ“自主回収”による後発品の生産の一時停止が挙げられ、これが、出荷調整や出荷の遅延、或いは欠品といった状況を助長していると考えられます。医薬品の回収の原因には、これまで繰り返し触れてきている“承認書と製造実態の齟齬”をはじめ様々なケースが見られますが、さすがに、ひと昔前のような医薬品(ロット)の品質自体に問題がなくても毛髪一本の混入を“異物混入”として回収が行われるケースは見られなくなりました。しかしながら、最近の回収事例にも、医薬品の品質に問題がないと判断されるケースが少なくありません。
医薬品の回収が行われると厚生労働省のホームページに“医薬品回収の概要”が公表されますが、その中に、“回収理由”などとともに“危惧される具体的な健康被害”の記載があり、ほとんどのケースにおいて“健康被害の心配がない”旨がコメントされ、同時に“品質に問題がない”ことを示唆する記述が見られます。最近の事例では、長生堂製薬のトリアゾラム製剤の“医薬品回収の概要”(2021年7月19日付け報告)の記述もこれに該当します。
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