医薬品品質保証こぼれ話【第42回】

2021/07/30 品質システム

医薬品・医薬品業界全体の信頼回復に向けてのスタートポイント。

後発医薬品の信頼性の回復

安心、安全な医療の推進において医薬品の品質確保が大前提であることは、医療関係者でなくても誰もが容易に理解できることですが、小林化工や日医工が引き起こした“違法製造”や“データ不正”の問題は、この大前提である“医薬品の品質”への信頼を大きく損ね、その社会への影響は図り知れず、厚生行政や医療、医薬品業界に大きな波紋を広げています。厚生労働省は先般、これに関連して、審査管理課および監視指導・麻薬対策課の二課長連名の通知、「医療用後発医薬品の承認審査時における新たな対応について」(2021.7.2, 薬生薬審発0702第5号, 薬生監麻発0702第5号)(以下、「二課長通知」)を発出しました。本通知は年初より相次いで発生した上記二社の後発医薬品に関する不祥事を受け、この種の法違反の再発防止を目的に発出されたものであり、この旨は本通知の冒頭にも明記されています。

これらの後発医薬品の製造や品質管理に関する違法行為は、本来、医薬品の商業生産段階の“品質確保”に関わる問題であり、これへの改善対策・再発防止策としては、通常であれば、すでに示されている、“GMPの抜打ち査察の強化や製薬企業の品質保証体制の整備”(注1)、また、先日、報じられた、“違法製造などによる業務停止期間の上限の引き上げ(「概ね110日」→「180日」)”といった罰則の強化などが対策の中心となるところですが、今回は上記の二課長通知のように、“承認審査の厳格化”といった、より上流のプロセスにまで厳しい対応が求められる状況を招いています。それほど今回の事案は重大であり、もはや、社会への影響の甚大さから“事件”と言えるほどの出来事であったと認識されているのが現状です。社会への影響としては、具体的には、“後発医薬品の品質・有効性・安全性への信頼の失墜”、および、それによる患者の“ジェネリック離れ(医療費抑制策へ影響)”、さらには、医師や薬剤師など医療の第一線で“処方や調剤など医薬品の使用に携わる医療関係者の製薬企業への不信”など、多岐にわたります。こういった、多方面への影響とその重大性に鑑み、上記の“後発医薬品の承認審査の厳格化”に加え、“後発医薬品の調剤加算”に関しても、廃止を含む見直しが行われるといった報道も見られます。

注1:「医薬品の製造業者におけるGMP省令通知を踏まえた無通告立入検査の徹底強化等について」(2021.2.9,薬生監麻発0209第1号)

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執筆者について

浅井 俊一

経歴 1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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