ゼロベースからの化粧品の品質管理【第10回】

小林化工(株)の市場回収問題を考える

(出典:小林化工 特別調査委員会 調査結果報告書:https://www.kobayashikako.co.jp/contact/survey_report.php

 化粧品の品質保証体制構築について考える時、逸脱管理と変更管理が最重要であると考え、前回まで優先的にお話させて頂きました。特に、医薬品等私たちが生産する製品は直接人に係る製品であることから、製造が指図通りに適切に行われること、試験が適切に行われ規格に適合していること、それを記録し確認することが特に重要になります。その過程の中で、通常の状態や従来の状態と異なることが確認された場合には、品質リスクを評価し、適切に処理することが必須になります。このことについて、第8回と第9回で逸脱管理と変更管理として管理のポイントをお伝えしました。
 今回、本来は手順書の作成の次のテーマについて説明させて頂く予定でしたが、医薬品で起きた原料の添加間違いの小林化工(株)の事故の報告書を確認したところ、潜在的にはどこの企業でも同じような芽は認められる事項であること、この事項を掘り下げることにより多くの学ぶべき点があることから、次の手順書作成のテーマに移る前にこの事故の内容について一緒に確認したいと思います。

1.    事故の概要
2020年12月4日、水虫薬であるイトラコナーゾール錠50㎎に睡眠薬であるリルマザホン塩酸塩水和物が混入し、多数の健康被害が発生した。

(組織面での不備の状況):直接原因ではないものの仕組みの問題点です。


1)    薬事申請書は研究開発本部薬事分析部が作成し、信頼性保証部薬制部が確認した後、申請された。承認された申請書は、製造管理部で製品標準書が作成、この書類の中に承認事項と製造手順書等が記載されており、承認書との矛盾はないものの、実際の製造はこの承認内容と異なる『現場フロー』に基づき行われていた。
⇒後述する使えない製品標準書と発行のタイミングの遅れ。薬事は薬事、現場は現場と独立した運営。双方のコミュニケーションの仕組みがどうなっていたのか?但し、よくあることでは?


2)    正規の文書である製造指図・記録書はハンディーターミナル入力のため現場に携行されていたが、製造に際しては参照されることはなかった。
⇒最近バーコードによる管理は普及していますが、使う人の立場に立ったIT化であること、運用面のフォローの仕組みがないと旨くいきませんね?特に、現場の人が楽になることがないと保証の充実と言っても定着しません。一方で、決められたITを使わない時に起きる可能性のある事故について、その怖さが身に沁みていれば、ITの使用は徹底します。


3)    秤量作業において秤量器には印字機能があるが、指定された量の秤量時に先ず印字し、その後、追加分を秤量して秤量作業を終えていた。その後、秤取量と秤量記録が同一となるよう分銅を秤量機に載せて量ることで秤量記録を作成していた。また、秤量記録を確認する担当者がいるが、秤量記録と製造指図・記録書の指定量と異なっていた場合には分銅を使って秤量記録を作り直していた。
⇒外部の体裁を整える行動はISO9001の認証維持、GMP査察でも常態化し易い事項です。やはり、本来のあるべき姿がなぜ守られないのか?守らない場合の怖さを認識することが必要ですね?加えて、作業を行うのではなく、モノを作る仕事をする意識がどこまで行き渡っているのかが重要ですね?


4)    製造記録は原則として有効期間に1年を加算した期間の保管が求められているが、実態が反映された現場フローは破棄され、実態でない製造指図・記録書のみの保管で実態の状況判断が困難であった。
⇒メモ書きを含めて全てデータであること、エビデンスとしては生のデータが最も重要であることの認識が必要です。これは、上の立場になればなるほど実態を知りたい意識が高いはずです。しかしながら、ミスは強く責められることから、上司は体裁を整えることを優先し、平穏に全て整える風土があったかもしれません。この事項は、本当の意味で責任を問われる仕事をしてきていない方が、事なかれ主義で旨くいくことで優秀と評価され仕事を進めてこられたのかもしれません。

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