医薬品品質保証こぼれ話【第30回】

2021/02/12 品質システム

業務の理解と自立性

緊急事態宣言に期待したほどの効果が見られず、首都圏や大阪など都市部のコロナ感染者数が高止まりで推移する中、“ワクチン担当大臣”が任命され、2月下旬の医療従事者への接種開始を目標に、日本もワクチン接種に向けて動き始めました。ただ、今回のワクチン接種には安定供給、超低温での保管・輸送、短期間での集団接種のための医師・看護師の確保など課題も多く、担当の河野大臣の手腕が注目されるところです。

ワクチン接種に限らず、こういった重要な課題の遂行の成否は、指揮を執る者の手腕、すなわち、リーダーシップと担当者(チーム)の実務能力に多くを依存し、この両者が良好な関係の下で十分に機能するための連携、チームワークがその成功の要件になると考えられます。換言すれば、リーダーシップに秀でたリーダーの下で、専門性に優れた担当チームが良好なコミュニケーションやモチベーションを維持し、必要な連携の下に業務を遂行することができれば、円滑に進行し予定どおりに目標を達成することが可能となります。業務推進に係る役割分担としては、目的達成の要件の整理と業務フローの策定をリーダーが行い、割り振られたそれぞれの業務を各担当チームが責任をもって実行することが基本となるでしょう。

ワクチン接種について言えば、必要なワクチン数量の確保、輸送時および保管時の品質保証、また、接種を行う医療関係者の確保など、目的達成の要件を漏れなく整理するとともに、これを基礎とした目的達成に向けての基本的な業務フローを作成することがリーダーの責務であり、これを受けて、それぞれの要件を具現化するために必要な情報収集と行動計画の策定、およびその推進が担当チームの責務と考えられます。ここで重要となるのは、リーダー、担当チームそれぞれが自立し、課せられた業務の意味、内容を理解し、それぞれの責任において実行することと考えます。このことは、医薬品製造や品質管理の業務においても同様であり、重大なミスがなく、日々、安定して、品質に優れた医薬品を生産するために必要となるリーダーと担当者の役割と責任そのもの、と言えるのではないでしょうか?
 

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執筆者について

浅井 俊一

経歴 1974年ロート製薬入社。品質管理・薬事・品質保証の各業務にそれぞれ7年・15年・16年間従事。退職後、2018年まで中国の原薬工場および国内受託企業において、改善・人材育成を含む品質保証全般に携わる。
中国での活動に、「新薬事法下の日本の医薬品品質保証体制」(2009/上海),「日本に輸出するための原薬品質の要件」(2017年/杭州)などの講演や、北京CFDA(現, NMPA)主管「医薬経済報」への「中国原薬の品質確保の視点」の連載(2012年)などがある。
取り組みテーマは「製薬工場のヒューマンエラー対策」,「中国等の海外原薬の品質と安定供給の確保」,「GMP記録の信頼性確保」,「組織コミュニケーションの活性化」,「作業者のモチベーションの確保」など。
著書に「改訂版GMP教育訓練マニュアル」(㈱じほう、共著),「3極対応/試験検査室管理実践資料集」(㈱情報機構、共著)などがある。
元,日薬連品質委員会常任委員。元,日本OTC医薬品協会品質委員会委員長。元日薬連CSV検討会メンバー。 薬剤師。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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