医薬品品質保証こぼれ話【第25回】
工程の管理と理解
前回、日本学術会議メンバーの任命見送りの問題、また、重大な医薬品回収に触れ、こういった重大な問題を回避するためには“原点に立ち返る”ことが大切であることを述べましたが、このような問題に対処するためのもう一つの考え方として、“工程を管理する”、すなわち、プロセスを定期的に観察し、適宜、必要な措置を講じるという考え方があります。日本学術会議に関して言えば(任命見送りの是非とその真の理由はともかくとして)、今回の菅首相を中心とする政府の関係者の対応から推察すると、これまで長きに亘りその運営の様々な点において、プロセスが管理されず放置されてきた可能性が考えられます。また、製造販売承認書に記載の製造方法を逸脱する条件での医薬品製造の実施など、重大な医薬品回収につながる行為については、言うまでもなく、GMPの考え方の基礎にある“工程を管理することにより品質を確保する”ということが軽視されていたことが理由の一つとして挙げられます。
医薬品製造に関して“工程を管理する”が意味するところは、製造工程そのもの、つまり、製造条件や手順が順守され、ミスなく規定どおりに進行しているか否かといった管理と、製造行為が適法に実施されているか否かといった法的側面の管理監督の二つが考えられ、この双方が工程管理の対象になると言えるでしょう。この二つの観点から日常的に工程を管理し、プロセスの状況が把握されていれば、小さな変化、異変に気付くことができ、早期の必要な改善対策につながり、問題の重症化を防ぐことが可能と考えられます。このことから、“工程を管理する”ことが大切であることは容易に理解されます。換言すれば、“工程(プロセス)が管理下にあるか否か?”が、高品質の医薬品を安定的に確保・供給する上で大変重要であり、また、モノの生産といったこと以外の、あらゆる事柄(プロジェクト、事業など)の的確な推進という面においても、同様に重要と考えられます。
“工程管理”と似た言葉に“生産管理”がありますが、工程管理はこの生産管理の一つであり、中でも特に重要な管理と言えるでしょう。医薬品製造において工程管理の対象となる工程は、原材料の保管から原薬/原料の秤量、調製、充てん、包装・表示、製品保管、出荷判定と移行しますが、特に調製工程は、混合、攪拌、溶解、反応、発酵、乳化、篩過、ろ過、造粒、打錠など、剤型ごとに様々な工程から構成されます。また、無菌製剤であれば無菌操作、錠剤や注射剤などでは異物検査などの工程も追加され、管理すべき工程は多岐に亘ります。こういった工程すべてにおいて的確に管理することができて、はじめて、目的とする医薬品品質が確保されるということになります。
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