医薬品,医療機器滅菌の新しいトレンド“放射線滅菌”【第6回】

2015/12/16 製剤

山口 透

 滅菌の目的は、GMP要求の一つである患者等が微生物汚染による感染等の不利益を被ることを防ぐことにあり、医薬品や医療機器製品を無菌化するためには、製品に付着したバイオバーデンを全て死滅または除去する必要があります。それでは、製品の無菌性保証をより確実なものにするためには何を行えばよいでしょうか。本稿では無菌試験に代わって登場した滅菌バリデーションの概要を紹介します。

 滅菌の場合、製品の無菌性保証は10-6を担保する必要があります。これは個々の製品に微生物が存在する確率が百万分の1というほとんどゼロに近い値ということです。この微生物存在確率の保証を担保するために考えられたのが滅菌バリデーションです。国内において、医薬品の滅菌バリデーションの方法は、日本薬局方 参考情報「最終滅菌医薬品の無菌性保証」、に記載されています。また、参考情報「最終滅菌法及び滅菌指標体」には最終滅菌法の紹介とバイオバーデン測定の重要性が記述されていて、参考規格としてISOの各滅菌法の規格が記載されています。さらに、2014年PIC/S GMP 1)や「最終滅菌法による無菌医薬品の製造に関する指針」2)が通知され、その中で、医薬品の滅菌方法として、ろ過滅菌、湿熱滅菌、放射線滅菌が収載されています。また、通知によれば、滅菌バリデーションは滅菌バリデーション基準により実施し、微生物管理として、環境モニタリングとバイオバーデン試験を実施する必要があるとしています。また、医療機器の場合は、エチレンオキサイド滅菌、湿熱滅菌、放射線滅菌に対してJIS滅菌規格が設定されています。
 滅菌バリデーションの要件としては、滅菌工程の開発、滅菌条件の設定、製品適格性、設備適格性(IQ、OQ)、稼動性能適格性(PQ)の各ステップを検証することが必要であり、3)さらに、滅菌バリデーションを補完する総合的微生物管理の観点及びGMPの観点からからは、製品及び包装の汚染菌の数と種類を調査し、また、製造工程、原材料、作業者などの汚染菌を把握することが重要になります。総合的微生物管理については後述します。

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執筆者について

山口 透

経歴 コンサルタント(滅菌、微生物管理、放射線改質)
元日本電子照射サービス(株) つくばセンター 技術担当部長
1955年生、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社にて医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品の開発(微生物関連、試験開発及びEOG滅菌バリデーション)、品質保証、薬事業務に従事し、2001年より日本電子照射サービス株式会社にて、電子線による改質、滅菌技術の研究開発、及び医薬品、医療機器等の電子線滅菌導入に係る滅菌条件設定、微生物、理化学受託試験を担当、2015年退職後、コンサルタント業(滅菌、微生物管理、放射線改質)開始、現在に至る。
元ISO TC198 WG8国内検討委員、 元ISO TC85 WG3 国内検討委員、元各JIS化検討委員、日本防菌防黴学会、高分子学会会員。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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