フェムテック新時代を読み解く【第2回】 ~女性のカラダとテクノロジー、 現場で知っておきたいこと~
フェムテックは、月経や妊娠・出産、更年期など、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する新たな潮流です。本連載では、経済産業省の補助事業を軸に、注目企業の取り組みや製品を紹介しながら、医療や製造の現場に求められる視点を読み解いていきます。
海外で生まれたフェムテックは、女性の健康をめぐる問題を“個人の困りごと”から“社会の課題”へと押し上げてきました。国内でも女性活躍社会の実現手段として、フェムテックへの期待が益々高まっています。企業、自治体、医療機関などが連携することで女性の健康に対する支援体制が整い始めた今、フェムテックは次なるフェーズを迎えようとしています。
第2回となる本記事では市場拡大の背景をたどり、現場の取り組みの中で見えてきた“新たなフェムテックの形”についてお伝えします。
2010年代前半、欧米を中心に広がり始めた「フェムテック(Femtech)」という造語は、ドイツのスタートアップ企業が月経管理アプリの開発に際して生み出したと言われています。
フェムテックはフェミニズム運動の機運を受け次第に広まり、女性起業家自身の経験を起点にしたサービスも誕生。社会課題の解決と新たな産業価値の創出を両立する分野として投資家の注目を集めていきました。
フェムテック拡大の一因として、ウェアラブル機器やAIデータ解析など、ヘルスケア産業の技術革新が進んだこともあります。
月経周期・排卵期・更年期症状など、これまで数値化が難しかった身体のリズムが可視化され、セルフケアの新しい形が生まれたのです。
2017年頃にはフェムテックが一つの産業カテゴリーとして確立。
米国や欧州では大手企業が参入し、「女性の健康を支えることは経済の成長分野である」という新たな価値観が広がっていきました。
2025年には6兆円、そして数年後には10兆円の市場規模になるとの予測もされており、これからも重要なマーケットであることは間違いありません。
日本でフェムテックが注目されたのは2010年代後半。
日本ではフェムテックの定義が海外よりも広く、「技術の有無に関わらず、女性の身体や健康をケアする製品・サービス全般」を指す言葉として定着しています。
当初は生理用品や妊活グッズなど、特定の分野にとどまっていましたが、2020年の「フェムテック元年」を機に、社会全体が女性の健康課題に目を向け始めました。
その後、製薬・家電・アパレル・IT、さまざまな業界の参入によって市場が大きく拡大。月経・妊娠・更年期といったライフイベント支援に加え、学生や子育て世代、シニア層を含む幅広い層を対象とした取り組みも増えています。
現在ではメンタルケア・生活習慣病予防など、ライフステージを通じた健康支援の概念へと発展しており、いまや「女性の健康課題をどう支えるか」は、企業や社会全体の在り方を問うテーマへと変化しているのです。
日本でフェムテック市場が拡大している背景には、働く女性の増加とともに、月経痛や更年期、不妊治療などの健康課題が就業継続やキャリア形成に影響を及ぼしているという社会的な認識の高まりがあります。
「女性の健康支援は企業の成長戦略につながる」という考えが注目される中、政府も社会全体の変化を促すために、フェムテックを“女性活躍推進の要”として位置づけたのです。
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