PIC/S GMP Annex 1 改定後の無菌環境における消毒・除染の最新動向

記事投稿:ニッタ株式会社 【PR記事】
 

PIC/S GMP ANNEX1における清浄化と消毒に関わる要求事項について

 

<はじめに:改定の背景と現場への影響>
2022年8月に欧州GMP、同年9月にPIC/S GMPから発行されたAnnex 1の改訂版は、無菌医薬品製造における微生物制御の考え方を大きく進化させました。2023年8月の施行から約2年が経過し、製造現場では新たな要求事項への対応が進んでいます。
特に注目されるのが、消毒・除染に関する規定の強化です。従来のホルムアルデヒド燻蒸法は高い除染効果を持つ一方で、発がん性リスクが指摘されており、より安全かつ効果的な代替法への移行が求められています。
本稿では、改定Annex 1における消毒・除染の要点を整理し、日本薬局方との整合性や薬剤選定のポイントを解説します。さらに、現場での実装に向けた実務的な視点と、ニッタ株式会社の取り組みについても紹介します。

 

1. PIC/S GMP Annex 1 改定の要点と意義
改定Annex 1では、Contamination Control Strategy(CCS)の策定が義務化され、消毒・除染もその一環として位置づけられました。以下の3つの条項が、無菌環境における消毒・除染の実務に直結する重要ポイントです。
- 4.33:消毒剤の選定と使用
- 4.34:消毒プロセスのバリデーション
- 4.35:消毒剤の無菌性と燻蒸・蒸気消毒
 
これらは単なる手順の遵守ではなく、リスクベースアプローチ(QRM)に基づいた科学的根拠のある運用が求められています。
 
 
2. 無菌環境における消毒・除染の実務ポイント
2.1 消毒剤の選定と使用(4.33)
PIC/Sでは、消毒剤の使用に関して以下のような具体的な要求事項を示しています。
- 文書化された計画に基づく清掃・消毒の実施
- 事前清掃による有機物・無機物の除去
- 消毒剤の残留除去
- 異なる作用機序を持つ複数の消毒剤の使用
- 定期的な殺芽胞剤の使用
- 有効性を確認するためのモニタリングの実施
特に注目すべきは、「異なる作用機序」と「殺芽胞剤の定期使用」です。これは、微生物の耐性化を防ぎ、広範な殺菌スペクトルを確保するための戦略です。
 
 
 ■関連情報:作用機序の異なる消毒剤の例
 
 
2.2 消毒プロセスのバリデーション(4.34)
消毒剤の選定だけでなく、実際の使用環境における有効性の検証(バリデーション)が求められます。以下の要素がバリデーションの対象です。
- 使用対象の表面材質(例:ステンレス、PVC)
- 使用方法(スプレー、拭き取り、燻蒸など)
- 消毒剤の調整・保管・使用期限の妥当性
バリデーションは、「期待される効果が得られること」を科学的に証明するプロセスであり、CCSの一部として文書化される必要があります。
 
2.3 消毒剤の無菌性と燻蒸・蒸気消毒(4.35)
グレードA/B環境では、使用する消毒剤自体が無菌であることが求められます。C/Dグレードでも、CCSに基づき無菌性が必要とされる場合があります。
また、燻蒸や蒸気消毒(例:VHP:蒸気化過酸化水素)を行う場合は、以下の点を検証する必要があります。
- 拡散性と均一性
- 濃度、温度、湿度などのパラメータ
- 使用する装置の性能と再現性
これらは、空間全体の除染効果を保証するための重要な要素です。

 

3. 日本薬局方における除染法と薬剤の比較
第十八改正日本薬局方の参考情報「消毒法及び除染法」では、無菌医薬品製造所等における除染の方法として、化学薬剤を気化または噴霧し、微生物数を設定レベルまで低減させる手法が紹介されています。ここでは、代表的な除染薬剤として以下の3種が挙げられています。
- ホルムアルデヒド
- 過酸化水素
- 過酢酸
それぞれの薬剤には特性とリスクがあり、使用環境や目的に応じた適切な選定が求められます。
 
 
4. 除染薬剤の比較と選定のポイント
4.1 ホルムアルデヒド:歴史あるがリスクの高い薬剤
ホルムアルデヒドは長年にわたり除染に使用されてきた実績がありますが、2004年に国際がん研究機関(IARC)により「ヒトに対する発がん性がある(Group 1)」と分類されて以降、使用リスクが強く認識されるようになりました。現在では、より安全な代替薬剤への移行が進んでいます。
 
4.2 過酸化水素:高い除染力と取り扱いの難しさ
過酸化水素は強力な酸化剤であり、芽胞を含む広範な微生物に対して有効です。しかし、材質への腐食性や変色リスクがあり、使用前に適合性評価が必要です。また、蒸気は無色・無臭に近く、作業者が除染中であることを認識しにくいため、誤操作による事故リスクも指摘されています。
 
4.3 過酢酸:安全性と除染効果のバランスに優れた薬剤
過酢酸は、近年注目されている除染薬剤であり、高い除染効果と作業者・環境への安全性のバランスに優れています。
 
 
■過酢酸の主な特長:
- 低濃度(約0.2%)で高い除染効果を発揮
- 常温で使用可能であり、微細ミストでの噴霧方式を活用することで設備への負荷が少ない
- 分解性が高く、酢酸と水に分解されるため、残留リスクが低い
- 空間噴霧での使用の際は、空間中の必要濃度が十数ppmと低く、安全性が高い
- 微細ミスト化や蒸気化技術(VPA)により、結露や腐食のリスクを低減

これらの特性により、過酢酸は再生医療や無菌医薬品製造の現場での採用が拡大しています。特に、ホルムアルデヒドや過酸化水素の代替薬剤としての有力候補とされています。
 

 

5. ニッタの取り組みとソリューション
ニッタ株式会社では、過酢酸の特性を最大限に活かした除染ソリューションの開発と提供を行っています。


主な製品と特長:


- FOGACT(フォグアクト):小型庫内や安全キャビネット向けの簡便な除染装置
- FOGWORKS(フォグワークス):大型製造施設向けの高効率除染システム
*姉妹サイト ライフサイエンス企業向け情報プラットフォーム iVEXLの製品紹介ページへリンクします。

- VPASS(ヴイパス): 安全キャビネットやCO2インキュベーターなどのHEPAフィルタを含む空間全体の除染を実現
これらの製品は、米国環境保護庁(EPA)認可の過酢酸薬剤「スポアクレンズ」を使用し、除染効果(BI生残率10⁻⁶未満)を実証しています。
*姉妹サイト ライフサイエンス企業向け情報プラットフォーム iVEXLの製品紹介ページへリンクします

 

6. まとめと提言
PIC/S GMP Annex 1の改定により、消毒・除染はより科学的かつ戦略的な管理が求められるようになりました。特に、作業者の安全性と製品への影響を最小限に抑えつつ、確実な除染効果を得ることが重要です。
その中で、過酢酸は安全性・効果・環境負荷のバランスに優れた薬剤として、今後の主流となる可能性を秘めています。除染方法の選定においては、薬剤メーカーや装置メーカーと連携し、現場に最適なソリューションを構築することが、GMP対応の近道となるでしょう。
 


 
【事業内容紹介】
ニッタ株式会社クリーンエンジニアリング事業部では、インダストリアルクリーンルーム(ICR)やバイオクリーンルーム(BCR)の環境を生み出す空調用フィルタの製造、浮遊微粒子・浮遊微生物等の環境モニタリングシステムの構築、過酢酸を用いたバイオ除染の要素を組み合わせることで、無菌環境構築・維持管理におけるトータルソリューションの提供を行っています。
ぜひ、本記事をきっかけに、現場の運用にお役立ていただければ幸いです。

URL:https://www.nitta.co.jp/lp/airclean/solution-medical/

 

<本件に関するご連絡先>
ニッタ株式会社
クリーンエンジニアリング事業部 
ライフサイエンス営業課

 


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(ライフサイエンス企業向け情報プラットフォーム iVEXLへリンクします)

 

 

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