製薬メーカーにおけるコア人財の育成【第7回】

 2. 多様性のマネジメント 「多様化こそ企業発展の原動力」
  2.1 雇用形態の多様化
  2.2 ダイバーシティー・マネジメント
 
 これまで、「1 人事マネジメントと戦略 『人事管理から人事マネジメントへ』」というテーマで話を進めてきたが、今回からは、「2 多様性のマネジメント 『多様化こそ企業発展の原動力』」というテーマに移って行くことにする。
 多様性には、生物学的なものと社会学的なものがある。今回、話題として取り上げるのは、もちろん、後者であるが、人種の様に前者とも区別がつかないものもありそうである。
 
2.1 雇用形態の多様化
 
 日本の「失われた10年」に時を同じくして、1990年代の後半から雇用形態の多様化が起こった。経済的な背景から多様化が起こったことは間違いないとしても、グローバル化による大きな影響は否定できない。
 厚生労働省は、就業形態に基づき、労働者を8種類に区分している。それらは、「正社員」、そして、「契約社員」、「嘱託社員」、「出向社員」、「派遣労働者」、「臨時的雇用者」、「パートタイム労働者」、「その他」であり、「正社員」と「正社員以外の労働者」という様に2種類に分類することもある。なお、近年は、「正社員以外の労働者」、すなわち、「非正規社員」が全体の30%を超え続けており、さらに最近は、40%に迫ろうとしていることもあり、雇用が不安定になるなど社会問題化している。
 

・正社員:雇用している労働者で雇用期間の定めのない者のうち、パートタイム労働者や他企業への出向者などを除いた、いわゆる正社員をいう。

・契約社員:特定職種(例えば、科学研究者、機械・電気技術者、プログラマー、医師、薬剤師、デザイナーなどの専門的職種)に従事し、専門的能力の発揮を目的として雇用期間を定めて契約する者をいう。 定年退職者等の再雇用者であっても、「契約社員」に該当する場合は「契約社員」とする。「臨時的雇用者」、「パートタイム労働者」、「その他」の労働者であっても、「契約社員」に該当する場合は「契約社員」とし、「嘱託社員」に該当する場合は「嘱託社員」とする。

・嘱託社員:定年退職者等を一定期間再雇用する目的で契約し、雇用する者をいう。

・出向社員:他企業より出向契約に基づき出向してきている者をいう。出向元に籍を置いているかどうかは問わない。

・派遣労働者:「労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」をいう)」に基づき派遣元事業所(厚生労働大臣の許可を受け、または届出を行っている事業所をいう)から派遣されてきている者をいう。

・臨時的雇用者:臨時的に、または日々雇用している労働者で、雇用期間が1か月以内の者をいう。

・パートタイム労働者:正社員より1日の所定労働時間が短いか、1週間の所定労働日数が少ない労働者で、雇用期間が1か月を超えるか、または定めがない者をいう。

・その他:上記以外の労働者で雇用している者(正社員と1日の所定労働時間と1週間の所定労働日数がほぼ同じで、パートタイム労働者その他これに類する名称で呼ばれる者を含む)。

 
 筆者は、「正社員」の他に「契約社員」、「出向社員」、「派遣労働者」、「パートタイム労働者」の雇用形態の労働者を抱える関連会社に関わったことがある。この時に、どの範囲の労働者までどれだけの人財育成経費が掛けられるかについて大いに議論した。いわゆるプロパー社員である「正社員」及び親会社からの「出向社員」に対しては、親会社に準じる人財育成経費を掛けることが当然だとしても、専門的能力を持っている「契約社員」に対して、そして、派遣先である会社が「派遣労働者」に対して、経費を掛けてまで人財育成を図らなければならないのか、結論を出すまでに相当の時間が掛った。最終的には、「契約社員」及び「派遣社員」にも「正社員」らと同様に人財育成策を図ることとした。このことにより、ともすれば雇用形態の差異により生じる差別感が軽減され、一体感が得られたと考えている。
 ここで、裁量労働制、とくに専門業務型裁量労働制について触れておきたい。製薬メーカーでは主に研究部門を中心にこの制度が取り入れられている。研究に従事する者は四六時中自身の研究テーマのことを考えている、という性善説に則った考え方であり、大いに推進すべきと思う。ところで、経団連は現行制度の問題点として、あくまでみなし労働時間であって労働時間の適用除外でないこと、対象業務の範囲が狭いこと、導入要件が厳格に過ぎることを指摘した上で、現行制度以上にホワイトカラーの柔軟な働き方に対応可能な労働時間制度として、ホワイトカラー・エグゼンプション(White-collar exemption、労働時間等規制の適用除外)制度の導入を提言している。さらにグローバル化が進展し、ホワイトカラーの位置付けが欧米並みに大きく変わるものと思われる。すなわち、年齢や業務内容に関係なく、ホワイトカラー自体が専門業務であるとの認識・認知が行われるであろうとの考え方である。なお、製薬メーカーにはないと信じたいが、裁量労働制という名のもとに時間外手当(残業代)の支給を逃れ、人件費削減を図っている場合もある。その中には、長時間労働を強い、なおかつ若者を使い捨てる、いわゆるブラック企業も存在するのである。

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