医薬品のモノづくりの歩み【第29回】

生産性を評価するための製造原価について(1)

前回まで、医薬品の「モノづくり」のパフォーマンスレベルを上げる上で、大切な取り組みとして生産性向上についてお話ししてきましたが、今回から、生産性の程度を金額に換算して、企業利益にどの程度貢献しているかを評価する製造原価について連載していきます。

一般的に、「モノづくり」における原価とは、「製造原価」のことを指します。
工場で医薬品を製造するためには、原材料を購入して人や設備、そして設備を動かすための動力やメンテナンス、品質試験など、あらゆる費用が掛かります。そのほとんどが製造原価として認識されますので製造を担う工場従業員にとって、品質向上、安定供給や技術力向上などと同様、製造原価を知ることは、日頃の製造で起こっている様々なことが、投入した資源に対してどのように影響しているか、その良し悪しを製造原価によって分析評価することで、さらに製造するために必要な費用をより効果的に運用して、より良い品質の製品をより安くできるように工夫するという点で、「モノづくり」に関する必要な知識と言えます。
製造原価は、読者の皆さんもご承知の通り「原材料費」「労務費」「経費」の3要素から成ります。(図1)

図1 製造原価の3要素

「原材料費」は、医薬品を作るために必要な原材料に掛かる費用のことで、原材料メーカーから購入する費用ですが、包装で使用するクラフトテープやバンドテープなどの補助材料の費用も原材料費として製造原価に含まれます。
「労務費」は、医薬品の製造に関わる人件費です。正社員や契約社員の直接の給与に加えて、社会保険費用や福利厚生などの費用なども含まれます。
「経費」は原材料費や労務費以外の製造に関わる費用のことで、電気、水道、ガスの光熱水道料、設備のメンテナンスや修繕に掛かる費用と部品代、減価償却費、工程試験などの試験材料費などが含まれます。
更に、製造原価には医薬品製造に直接費やされる費用が計上されるだけではなく、製造に間接的に関わっている総務や環境管理などの工場管理部門や搬送業務、生産計画、在庫管理などを担う生産管理部門、生産設備の設計や施工、メンテナンス、修繕などを担う工務部門、製品の試験や品質管理を担う品質管理部門に掛かる費用も製造原価に入ります。(図2)
つまり、製造原価は製造部門だけで発生する費用だけでなく、間接的に製造に関わる間接部門で費やされる費用も原価として組み入れられることから、工場のほとんどの従業員は、製造原価の意識を持つことが望まれます。

図2 製造原価に含まれる費用

 

 

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