医薬生産経営論【第5回】

 地方の工場に行き「ここの県民性はどのようなものか」と聞けば、ほとんどの工場で共通して回答に挙げてくるのは「真面目」(勤勉)ということである。そして、あの東日本大震災で海外から称賛されたのは、多くの人の記憶に未だ残っていると思うが、日本人の「思いやり」や「忍耐強さ」であった。大都会の東京で大震災の夜、膨大な数の帰宅困難者と彼らを助けようとする街の人びとが見せた麗しく秩序ある行動も、日本人とは何か、日本人のこころの美しさを、あらためて深く思い知らせてくれた。その崇高なこころの美しさをすべての日本人は強く意識し、日本人のDNAを受け継いで生まれ育ったことを大いに誇りにすべきと思う。
 縄文の時代から海洋交易国家として、さらに明治時代から加工貿易立国として、この国とその産業の発展と繁栄を支えた最大のものが、今日でもすべての日本人の中に密やかに息づいている。
 
 還暦桜の私が会社に入社した当時、多くの日本企業は自らの会社の優れたところを、「人を大切にする」ことであると、誇らしげに語っていた。戦地から戻ってきた(復員した)社員を仕事はないけれど元の職場や事業所に復職させた、どんな不況時にあっても従業員を解雇しなかった、などなどである。そして、新入社員は、私もその一人であるが、それらの話を聞き感動し、この会社に入社したことに大きな喜びと忠誠心の芽生えを感じたのである。
 経営は従業員のことを、会社の最も重要な財産であり、家族でもあると認識し大切にしていた。
 「社畜」のようだと批評する著名コンサルタントもいたが、家族主義が、従業員の人間としての成長を助け、仕事に必要な技術やチームワークを育てたのは、間違いのない事実である。経営と従業員の間には、目には見えないけれど、固く結ばれた絆があった。

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