医薬品品質保証こぼれ話【第50回】
変更管理と安定供給
医薬品の自主回収に伴う業務停止や生産の一時停止により医薬品が不足するという状況が続いており、医療現場の混乱が深刻さを増しています。本連載は今回で第50回という節目を迎えましたが、今年に入ってからは何度となくこの課題に触れ解決の糸口を模索してきました。この間、状況は改善するどころか混乱と混迷の度を増しているのが現状かと思います。この問題は医療や調剤の現場に計り知れない影響を与えており、その直接の不利益を被っているのは患者・国民であり一刻も早い解決を要します。
このような状況に至った経緯を紐解くと、後発医薬品の使用推進のための調剤加算等のインセンティブにかかる施策をはじめ、医薬品の製造販売承認書への製造方法の詳細記載、PIC/S-GMPへの整合化による安定性モニタリングの要件化など、医療政策やGMP規制の国際調和など様々な要因が複雑に絡みあった構造的な問題に行きつきます。しかしながら、この課題を解決する責任の主体は製薬業界にあり、また、医薬品製造に際する関連法令の順守や品質の確保は当事者たる製薬企業にしかできないことです。先ずは、この問題を後発医薬品企業だけの問題と捉えず、医薬品業界全体が一丸となり知恵を絞って早急に対策を講じることが望まれます。その上で官の協力を得ながら、構造的な問題の解決にも少しずつ取り組んでいくことが期待されます。
今回はこういった考えに基づき、医薬品の品質保証を的確に進める上で最も重要なGMP要件と言っても過言ではない“変更管理”を取り上げ、上記課題の解決に向けて考察を行いたいと考えます。
“変更管理”は、GMP省令第14条において「変更の管理」として要件が規定されています。本年(2021年)8月1日に施行された改正GMP省令においてはその重要性に鑑み、以下に示すように、本条第1項の冒頭の表現が変更されたほか多くの条項が追加されました。第1項冒頭の記述は、改正前は“製造業者等は、製造手順等について、製品の品質に影響を及ぼすおそれのある変更を行う場合においては、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、 次に掲げる業務を行わせなければならない”と記載されていたのに対し、改正後は“製造業者等は、原料、資材若しくは製品の規格又は製造手順等について変更を行う場合においては、・・・(以下、改正前と同じ)”と、変更管理の対象について具体的に記載されています。
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