医薬品設備建設における「オーナーのプロジェクトマネジメント2nd改訂版」【第7回】
12. 基本設計ステージ
第1回 第2項の表2.1に記載したが、基本設計とは、基本計画に基づき当該プロジェクトの基本的な仕様を決定し、製作施工の見積ができる仕様書を作成し、実施のための最終的な予算化、スケジュール化を行うステージである。つまり、生産設備・付帯設備・ユーティリティ設備などの諸施設の、完成後に期待される性能を具体的に定義し、機能設計(詳細設計)に必要な諸条件を構築する設計作業およびエンジニアリング作業を行うステージである。さらにこの基本設計の成果(予算、スケジュール、基本設計パッケージなど)の承認を得て、次ステージへの移行のGo/No-Goの第三次評価(事業化の最終評価)を行うステージと考えられる。新製品の場合は、工業化研究成果、一般的な技術データ、適切な設計手法に基づき、プロセス(製造工程)の最終化を行う。このステージにおける検討のすべてを製薬会社にて実施することは、現状の国内製薬会社には困難な状況であり、プロセス設計を除く基本設計の全てあるいはかなりの部分を外部に依頼せざるを得ない。
基本設計の良し悪しが、今後のプロジェクトの完成への大きな影響を及ぼす。またプロジェクト完成以降の設備の長期稼働における運転のし易さなどへ、大きな影響があるといっても過言ではない。私は、常々、「基本設計が終了すれば、後はプロジェクトのレールに乗って進められる」と考えている。それほど、基本設計は重要であり、またロバストな基本設計が必要である。まだ基本設計の段階だから適当にして、詳細設計で考えればよいというような考え方は、絶対に無くすべきと考えている。プロジェクトでは、コンセプトを発展させながら、それを基にして基本設計を行い、そして基本設計を基にして、詳細設計へ発展させていくもので、らせん階段をぐるぐると上がっていくようなものである。したがって、らせん階段の下部が外されると、上部にある詳細設計は崩れ落ちて、再度下から積み上げていくことが必要となってしまう。
主な検討項目は(以下の項目は順不同であるが)、
- 基本計画の具現化
設計の根拠となる設計基準の作成
基本計画のコンセプトに基づき基本設計を実施
基本仕様の決定
主要な基本設計仕様としては
-確定プロセス設計
-P&ID
-基本配置図
-機器リスト
-機器仕様書(ベンダー見積のとれる仕様書)
-各工事基本計画/仕様書/仕様図(サブコントラクター見積のとれる仕様書)
土木建築・空調・配管・電気・計装・DCS・断熱・塗装他 - 当該プロジェクトに関するバリデーションマスタープランの作成
- 基本設計のリスクアセスメントおよびインパクトアセスメント
- サブコントラクター施工およびベンダー製作の見積が可能となる仕様書の作成
(設備一式をコントラクターに発注する場合は、コントラクターからサブコントラクターやベンダーの見積を意味する) - プロジェクトの実施計画/組織、および外部依頼先への契約方式などの決定
- 実行予算/スケジュールの決定
- 上記を基に事業化の第三次評価を行い、プロジェクト実行のGo/No Goを最終決定
(1) プロセス設計および基本設計
基本設計ステージでは、プロセス設計の確定が必要である。基本計画では複数のプロセス案が存在していても、このステージでは決定する必要がある。プロセス設計および基本設計では以下を検討・作成する。
- プロセス記述書
- プロセスブロックフロー
- 確定プロセスフロー
- 物性データ最終版
- 物質収支最終版
- 製造法、運転レシピ、タイムシート
- 設計基準書(設計条件書)
- P&ID
- 基本配置図
- 機器リスト
- URS、DCS-URS
- 機器仕様書(ベンダー見積のとれる仕様書)
- ユーティリティ設備基本仕様
- ユーティリティ消費量リスト
- 確定運転方案(製造法とタイムシート)
- 材質選定基準
- 汚染物質データ
- 原材料および廃棄物リスト
など
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