奈良から発信する“品質”のコ・コ・ロ──くすりの歴史と現場のいま【第10回】
第10回 終わりに──品質は“土地”がつくる
奈良県で薬務行政を担当している橋本です。
第1回から9回にわたり、奈良県内の製造所における適合性調査の現場、ワークショップ立ち上げの背景、現場で働く方々の言葉や変化の兆しを紹介してきました。
第9回では、責任役員自らが学び、その内容を社内で共有するという行動が生まれたことをお伝えしました。
品質文化は、理念ではなく、行動として現れ始めています。
そして今、制度も大きく動いています。
1.令和7年5月21日公布の薬機法改正が意味するもの
令和9年施行の改正薬機法では、医薬品産業の信頼回復と安定供給の確保を目的に、ガバナンスの強化が打ち出されています。
主なポイントは次のとおりです。
① 責任役員に対する変更命令制度
責任役員が原因で薬事に関する法令違反が生じ、国民の生命・健康に大きな影響を与える可能性がある場合には、厚生労働大臣が責任役員の変更を命ずることができるようになります。
これは、責任役員が単なる名義上の存在ではなく、法令遵守体制を統括・監督する責任が直接問われるようになり、「知らなかった」では済まされない構造が、より明確になります。
② 安定供給体制の整備義務の強化
近年の供給不安を受け、医療用医薬品の製造販売業者に対し、責任者の設置や手順書の作成等、安定供給を確保するための体制を整備することが、法令上明確に位置付けられます。
品質確保だけでなく、
・製造能力
・リスク分散
・供給継続の計画性
といった経営レベルの判断も問われます。
③ 定期適合性調査の在り方の見直し
定期適合性調査の頻度が原則5年に1度から3年に1度と見直され、実施方法についても、リスクベースの視点を踏まえて見直されます。
2.制度だけでは守れない
これらの改正に共通するキーワードは、「実効性」です。
体制を整えているかではなく、その体制が実際に機能しているか
責任役員がどのように関与し、判断し、是正しているのか
その説明をできることが、より重要になります。
しかし、制度がどれほど強化されても、それだけで品質が守られるわけではありません。
コメント
/
/
/
コメント