奈良から発信する“品質”のコ・コ・ロ──くすりの歴史と現場のいま【第9回】

第9回 「分かっているつもり」からの転換
─責任役員が動いたとき、現場はどう変わり始めたのか


奈良県で薬務行政を担当している橋本です。
前回は、初回の対象を“現場担当者”ではなく、“責任役員”とした理由についてお伝えしました。

では、実際に責任役員が集い、学び、対話した結果、何が起きたのでしょうか。
第9回では、第1回目ワークショップの参加者の声と、そこから見え始めた変化についてお伝えしたいと思います。

1.「知っている」つもり
今回のワークショップでは、責任役員に求められる法令遵守上の12項目について、事前・事後アンケートを実施しました。
事前アンケートでは、多くの項目で「理解している」「すでに実施している」という回答が並びました。

しかし、事後アンケートの結果を見ると、状況は大きく変わっています。
「理解不足や誤解していた点があった」との回答は、12項目すべてに存在していました。

これは、責任役員が“できていない”という意味ではありません。
「分かっていると思っていたが、説明しようとすると曖昧だった」
「自社の取組みは本当に実効性があるのか」
という、自己点検の視点を獲得した結果だと感じています。

特に、
「総括製造販売責任者及び製造管理者が有する権限(業務の指示・監督、措置の決定・実施等)を明らかにしなければならないこと」
「総括製造販売責任者、製造管理者及び従事者にGQP・GVP・GMP省令に基づく業務を監督し、その他必要な措置を講じなければならないこと」
といった項目では、「何となく知っていた」状態から、「理解した」という意識への変化が顕著に見られました。

2.「同じ立場」だからこそ語れた本音
ワークショップでは、参加者が責任役員という共通の立場でした。
そのため、
「現場から報告される情報を、どの様に受け止めるべきか悩む」
「品質と経営判断の狭間で迷った経験がある」
といった、普段は表に出にくい悩みも率直に共有されていました。

参加者の声には、
「責任役員として今後何をすべきかが見えた」
「組織を“自分事”として捉え直すきっかけになった」
といった意見が聞かれました。

ここで重要なのは、誰かに答えを与えられたのではなく、他社の事例や対話を通じて、自分自身で気づいたという点です。
この“気づき”こそが、その後の行動を変える起点になります。

3.現場は、すぐには変わらない。
では、このワークショップを経て、現場は変わったのでしょうか。
正直に言えば、劇的な変化がすぐに起きるわけではありません。

しかし、参加した責任役員からは、
「責任役員として、今後何をすべきかがよく理解できたため実践したい」
「責任役員の責務について難しさを痛感した」
といった変化が語られています。

これは小さな一歩かもしれません。
参加した責任役員の中には、ワークショップで学んだ内容や気づきを、社内の朝礼で従業員に向けて共有したという話も伺いました。

経営層が自ら学び、その内容を自分の言葉で現場に伝える姿は、従業員にとって「品質を本気で考えている」という何よりのメッセージになります。
現場にとっては、「自分たちだけが言っているのではない」という安心感につながり、日々の判断や声の上げやすさに影響する大きな変化だと感じています。

 

 

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