エッセイ:エイジング話【2026年5月】
蒸留器との遭遇
初めて蒸留器に遭遇した時、正直に言って驚きました。それまで、馴染んだ装置とは一線を画しピカピカに輝いていました。大事な用途に使う、かつ完成度の高い機械だとの印象を受けました。
外観上の驚きはともかくも、立ち会ったFATにおいて、いま何処でも実施されるIQ, OQばかりでなく、出荷時に蒸留水をつくり性能チェックとして、エンドトキシン試験を現場で行いました。これは乗用車の出荷時なら、テストコースで走らせて性能チェック後に出荷することに該当し、ここへも正直に言って驚きました。
(FAT:Factory Acceptance Test, IQ : Installation qualification, OQ : Operational qualification)
注射用水は蒸留器でつくることが続きます。「注射という」ごく稀な医療行為に使うべき「水」で在るからでしょう。もし、蒸留とは別の手段でつくり、何らかのトラブルが在っては成らない厳密な考え方に基づきます。
日本薬局方は、1988年まで注射用蒸留水と製造法をも限定した名称を定めました。蒸留が注射用水をつくるための唯一手段だったのです。
話は変わりますが、蒸留酒をつくるとき、他の手段では難しいと思います。ウヰスキーの風味は、つくった場所・人・方法に見合う味覚が引き継がれます。もし、つくり方を変えようものなら、「こんなのじゃなかった」と苦情が直ぐに寄せらるでしょう。
伝統の味を引き継いだ人は、「こんなのじゃなかった」を言われないよう伝統を守りつつ、新しい味覚センスを加えると蒸留所を見学したときに訊きました。
アルコール濃度数字では示せない、天候にも左右する味を守ること、ここが蒸留酒を継承する根源にあると話されました。ただ、人の味覚は環境とも相まって時と共に変わり、代わってゆくと思っています。人の嗜好が変わりゆく様は奥が深く、興味を持ちますからしばらく続けます。
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