GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第63回】

教育訓練
1.嫌なことの記憶
8月26日NHK「チコちゃんに叱られる」で、なぜ嫌なことははっきり覚えているのかという問題が取り上げられた。結論として、悲劇を繰り返さないために、情報を出来るだけ細かく収集しようとするためであると説明であった。交通事故にあった際、スローモーションのように見えたと感じるのも危険を感じた同じ現象といえる。逆に楽しい思い出はざっくりとしたもので、早く時間が過ぎると感じる。辛い、退屈時間は遅く感じるのも同じ現象だそうだ。
毎日の作業が、危険を感じ、詳細な記憶になるようなものとすることは避けるべきである。もし、危険な作業が、毎日とまでならなくても連続することで、慣れが生じる。慣れから、エラーが生じ、危険度が増すこともある。危険性に慣れ、過ちを起こさない様、訓練が必要となる。消防士は、訓練を重ねることで、危険な状況でも冷静な判断ができるように育成するのである。ヒューマンエラー防止のためには、作業の手順だけでなく、環境やその作業者の作業時の感情など、あらゆる情報を整理し、CAPAとして、有効な手段を見出す必要がある。
番組の中で、嫌なことを忘れる方法として、人に話す、紙に書き出すなどのアウトプットをするとよいとアドバイスがあった。アウトプットすることで忘れるというより、情報の整理をすることで、冷静に対処できるようになると思われる。ヒューマンエラーを起こしたからと反省文を書くのではなく、その発生した原因を究明し、再発防止策につなげることが重要である。教育訓練不足と短絡的に解決するのではなく、その手順を作業者が理解していたか、理解できなかった原因が何かを突き止める必要がある。その作業中に、失敗した、ミスをしたという自覚があるかどうかも重要な点である。その時、嫌な記憶として鮮明に覚えているなら、ミスをしたと自覚しているであろう。後で本人からミスをしたと申し出をした場合も、通常と異なる作業をしたと自覚があったと思われる。チェック者や、照査者が見つけたとしても、作業者が、気付いていたかをまず確認するべきである。作業者本人の自覚の有無により、是正措置は変えなくてはならない。ヒューマンエラーだから、教育訓練の不足と決めつけ、教育訓練の徹底を是正措置としてはならない。
失敗しない人間はいない。しかし、失敗を再発させない方策はある。ミスを起こす場面は、過去において同様な事象が起きていることが多い。CAPAの予防措置として、過去の事象と同様なことが起こりうるか検証すべきである。製造管理者として勤務していいた時、ヒューマンエラーが起きた時、前にも似たような事象があったと思うことが度々あった。発生場所や作業者が異なってはいるが、内容が類似することは多い。情報の共有化ができていないのである。組織によっては、ヒューマンエラーの情報共有化は、ヒューマンエラーを起こした当事者に対するパワハラになるという意見もある。情報の共有化がその作業者に対するいじめにならないようにすべきであるが、他の部署や他の作業者に注意喚起として情報を知らせることは、予防措置として必要である。
CAPAとして、ヒューマンエラーを防止するためにも、その作業にミスが生じる可能性について、作業者が自覚できるように、現場においてリスクを認識するような環境作りが必要である。そして、ヒューマンエラー発生時に、作業者がそのエラーを自覚し、発生時の記憶が鮮明なものとして、他部署や他の作業者に情報共有が図れるものにすることで、ヒューマンエラー防止の管理体制が構築できることになる。
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