私が経験したGMPの半世紀 品質を保証する科学:GMPの歴史と本質【第2回】
【第2回】
プロセスバリデーションの導入
バリデーションという概念のルーツは、アメリカのアポロ計画(1960年代)の宇宙開発技術にあります。打ち上げロケットは一度使ったら終わりです。「試しに飛ばしてみて、大丈夫だったからもう一度飛ばす」という抜き取り検査的な概念が通用しません。そこでNASAは、「設計と製造プロセスが完璧であれば、出来上がったモノも完璧であるはずだ」という信頼性工学の考え方を徹底し、バリデーション概念の原型を作りあげました。
FDAの担当者は、「ロケット産業のような精密な品質保証が、人の命を預かる医薬品業界でできていないか?」と考え、NASA由来の「プロセス管理によって品質を作り込む」という手法をGMPの世界に導入しました。バリデーションは「NASAのアポロ計画で培われた、失敗が許されない環境での品質保証技術を医薬品の世界に転用された」技術であると言えます。このあたりの経緯を知ると、なぜバリデーションがこれほどまでに「文書化」や「事前の計画」をうるさく求めるのか納得できるのではないでしょうか。
FDAにより、1987年に発出されたプロセスバリデーションの定義は、「あるプロセスによって設定した規格や品質特性に適合した製品を恒常的に生産できることを高度に保証する証拠を確立すること」というものでした。しかし、恒常的に製造できるとはどういうことか?医薬品の製造工程がバリデートできればよいのは誰にでも理解できるが、一体どのようにしてバリデーションを実施すればよいのか、具体的な方法が示されなかったため、世界中の規制当局や製薬企業を悩ませました。
FDAもよほど困ったのでしょう、1993年にFDAは「実生産スケールでの連続3バッチの成功」をバリデーションの完了要件として具体的に提示しました。これが業界内で広く認知され、「FDAの査察をクリアするための絶対基準」として、世界中に「3バッチルール」が定着してしまいました。科学的根拠に乏しいまま、3回成功すれば「一生安泰」という誤解が広まった結果、市販後に発生する変動に対応できず、「バリデーション済みなのに不良品が出る」という事態に悩まされ、さらに、一旦プロセスをバリデートしてしまうと、少しでも手順を変えると「再バリデーション」が必要になるため、現場がより良い製造方法への改善をためらうという本末転倒な状況が続きました。
このような状況を改善するために、2011年、FDAはプロセスバリデーションのガイドラインを改訂し、プロセスバリデーションとは、製品のライフサイクルを通じて、必要なデータを収集し評価する活動であるとし、プロセスバリデーションは連続3バッチの成功というような一過的な活動ではなく、医薬品のライフサイクルを通じて、継続的にプロセスを改善していく活動であると定義し直しました。すなわち、プロセスバリデーションとは、ステージ1:プロセスの設計に始まり、ステージ2:実生産スケールでのプロセスのクオリフィケーション(PPQ)を経て、ステージ3:商業製造中の継続的ベリフィケーションに至る一連の活動であり、その医薬品が販売されている限り、プロセスバリデーション活動は終わることがないことになりました。
コメント
/
/
/
コメント