【第10回】オランダ通訳だより

あれも監査、これも監査

すっかりご無沙汰しております。オランダを拠点に欧州各地でGMP監査通訳を行っております、古田泉です。前回12月に投稿してから、またあちこちの製造所にお邪魔して、気づけばもう桜の季節を通りすぎていました。今年も花粉症に悩まされている仲間の皆さんに、陣中お見舞い申し上げます。

さて突然ですが、通訳とはどのような仕事だと思われますか?

昔から、通訳や翻訳は「縦のものを横にする」仕事と言われてきました。でも単なる言語変換ではありません。内容や意図を理解して、ターゲット言語で適切な用語と表現を選ぶプロセスには、その分野の知識をはじめ、場の目的や経緯、当事者の立場や関係、文化的・社会的背景といった、様々な文脈がかかわってきます。

そのため、場によってニーズは異なり、通訳の対処方法も異なります。
「端折らずすべて訳す」のが適切な場合もあれば、「全部訳せばいいわけじゃない」場合もあります。ときには、映画の字幕よろしく話の流れを優先して意訳し、不要な脱線や滞りを避ける場面もあります。

またちょっと違った切り口で見ると、必要な通訳技術レベルの高さと、通訳ユーザーの利害の大きさは、必ずしも比例しません。あまり良い例えではないかもしれませんが、不特定多数が参加する学会の同時通訳と、提携関係にある2社のトップ会談の逐次通訳は、そういった点で対照的と言えます。

もちろん、業務の多様性は通訳にかぎったことではなく、監査にもあてはまります。大まかな分野だけでも、会計・財務監査、業務監査、品質・安全・環境監査、情報・IT・セキュリティ監査、GMP・サプライチェーン監査、コンプライアンス監査などがあり、それぞれ実施主体によって、内部監査、外部監査、規制監査に区別されます。これらはさらに細分化できます。

GMP監査だけを見ても、治験薬製造と商用生産の別、製剤の種類、初期工程か最終工程か、受託者の規模や組織体制、さらには委託者と受託者の関係性も考慮する必要があります。


こういった監査の多様性を意識するきっかけになったのは、昨年初めて担当した医療機器のISO監査通訳でした。もっぱら医薬品製造委託先でのGMP監査で通訳をしているため、いろいろとカルチャーショックだったのですが、強く印象に残ったことを2つ、守秘義務に抵触しない範囲で書いてみたいと思います。

 

 

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