【第8回(最終回)】電気/電気設備のなぁぜなぁぜ

2025/04/25 施設・設備・エンジニアリング

医薬品製造プロセス特有の電気設備の要点を解説

①    防爆仕様

まずは防爆についてです。

医薬品の製造では、原料や製法にアルコールをはじめとした有機溶媒が使用されていたり、副生成物や置換製法として水素などが扱われていたりしており、揮発して引火性の高い、もしくは爆発性のある化学物質、危険物を使用している、さらには原材料や製品が可燃物の粉末で粉じん爆発のリスクがある場所をお持ちのことがあると思います。

引火性の高い、もしくは爆発性のある物質が存在する環境においては、あらゆる電気設備は発火源となる可能性が高いため、そのような環境に設置せざるを得ない電気設備は防爆仕様のものを選定し、仕様に見合った適切な専用施工方法を取る必要があります。

<防爆機器の特徴>
  • 発火源になり得る充電部分が爆発性雰囲気へ露出しない様な密閉構造を持っている。
  • ケースは最高表面温度が可燃性材料の引火点を超えない様に断熱設計、管理をする必要がある。
  • 電気的な接続分は火花を出さない様な設計になっている。
  • 原則として防爆機器はIEC60079、ATEX指令(欧州)、NEC500(米国)などの規格に基づき、認定され適切な防爆措置がされている。
図1.防爆機器例
(左:照明 出展 星和電機HPより、中:モータ 出展TMIEC HPより、右:コンセント 出展 岩崎電気HPより )

構造、回路構成などが一般機器と異なっているため、また流通数量も多くないため非常に高価になっています。単価は一般機器に比べて少なくとも約2倍、機器によっては10倍近いものもあります。

また一般品では様々な仕様(例えば形状、色、材質など)が選択可能でも、防爆仕様ではまず選択することができず、サイズもほとんどが大きいものとなり取り付けにも制限が出てきます。

当該区域について全て防爆機器を使用すれば安全、安心ではありますが機器コスト、施工コストは尋常ではなく高くなります。

よって防爆機器を設置すべき場所の危険区域を限定指定し、発生しうる対象可燃性物質の種類と頻度に応じて区域・ゾーンを分類し、適切な防爆対策を講じることになります。

認定された防爆機器のグレード、構造も、以下に示す10種あり、こちらも可燃性物質の種類とゾーン指定によって選定されることになります。

 

 

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執筆者について

國分 宏剛

経歴

株式会社シーエムプラス エンジニアリング事業本部 チーフエンジニア(電気設備)
第三種電気主任技術者

ガラス製販会社入社、エンジニアリング部門にて生産設備の新規開発から量産化、工場新設から改廃までの設計、外注管理、試運転・立ち上げ、保全に従事し、その後エンジニアリング会社入社、廃棄物焼却・発電プラントの建設・立ち上げに従事。再生可能エネルギー会社にて木質バイオマスガス化発電プラントの建設業務を経て、株式会社シーエムプラス入社。
医薬品製造工場をはじめとした各種工場、プラントの電気設備及び工程制御の設計業務に従事中。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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