業界雑感 【2021年3月】

2021/04/02 その他

 今回の薬価改定で、いわゆる「G1」ルールによって初めて市場からの撤退を予定している長期収載品があるとのこと。G1ルールとは後発品への置き換え率が80%以上の長期収載品について、6年をかけて薬価を後発品と同じ価格まで引き下げるというもの。後発品メーカーが増産体制を確保するため、撤退にはG1適用開始から6年間の猶予期間が設けられているが、増産体制が確保されればそれより前に撤退することも可能ということである。従来の方法で長期収載品を市場から撤退させるには、供給停止事前報告書を厚労省に提出し、疑義解釈委員会の審議を経て経過措置の告示後、一定の経過措置期間を経てようやく可能となる。供給停止事前報告書の提出に至るまでにも社内ですったもんだする期間があり、ようやく提出できたとしても関係学会・オピニオンリーダーの先生・医療機関への対応など丁寧な調整が必要となる。さらに供給停止が了承されても経過措置期間中は一定の在庫を確保しておく必要があり、市場からの撤退にはとても長い時間と労力が必要となる。
 2013年にオーソライズドジェネリック(AG)が登場したときは、長期収載品からAGさらにジェネリックという流れで長期収載品が市場撤退しやすくなる、と思ったのだったが、実際はそうはならなかったようだ。AGは一定のシェアを確保し、長期収載品の売上高は漸減となりつつも一定量が残るという、単に長期収載品とジェネリックが分け合っていた特許切れ医薬品の市場にAGが割って入った格好となり、その結果ジェネリックメーカーはより小さくなったジェネリックのシェアを分け合う形になってしまった。それでも後発薬使用促進策によりジェネリックメーカーは大きく業績を伸ばす結果となるのだが、逆に多くの先発メーカーは長期収載品ビジネスに見切りをつけ、ジェネリックメーカーやファンドに譲り渡してきたことで、ジェネリックメーカー同士がそれぞれに長期収載品・AG・ジェネリックを持ちシェアを争うといったへんな構図になってきたように思える。

2ページ中 1ページ目

執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

72件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年7月2日(水)10:30-16:30~7月3日(木)10:30-16:30

門外漢のためのコンピュータ化システムバリデーション

2025年8月21日(木)10:30-16:30

GMP教育訓練担当者(トレーナー)の育成

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます