ある老兵の視点【3】

PIC/S PI 006 の改訂
適格性評価とバリデーションに関する査察官向け勧告

PIC/Sの査察官向けガイドライン「PI 006(適格性評価とバリデーション)」が、約19年ぶりの抜本的な大改訂を迎えた。ページ数も26ページから49ページへと大幅に拡充され、2015年に改訂されたPIC/S GMP Annex 15の基本原則を補完し、最新の業界基準に合わせる内容となっている。

医薬品製造における品質保証の潮流は、単なる文書化から、科学とリスクに基づく「ライフサイクルアプローチ」へと完全にシフトしている。かつてのバリデーションは、設備を導入し規定回数の実生産を行えば完了とみなされる側面があった。しかし今回の改訂は、初期の適格性評価から製品の全ライフサイクルを通じた継続的なプロセス確認と状態維持への転換を、強く業界に促すものである。

今後、規制当局の査察官は、「企業が品質リスクマネジメントをいかにバリデーション活動の根底に統合し、科学的根拠に基づいて評価範囲や合格基準を決定しているか」をより深く検証することになる。本稿では、このガイドライン改訂の全体像と、QA(品質保証)担当者が直ちに取り組むべき実務的なポイントを解説する

1. ガイドライン改訂の全体像と主な変更点

  • ライフサイクルアプローチの全面適用 
    施設、ユーティリティ、設備、プロセスの設計から運用、そして廃止に至るまで、ライフサイクル全体を通じたアプローチで適格性評価とバリデーションを実施することが明記された。
  • 各適格性評価ステージ間の厳格な移行管理 
    ユーザー要求仕様書(URS)から DQ、IQ、OQ、PQ への繋がりが強調された。未解決の逸脱や未達成の許容基準がある状態で次のステージへ進む場合は、次の活動に重大な影響を与えないという「リスク評価」と「正式な承認」が必須となる。
  • 変更管理とVMP(バリデーションマスタープラン)の再定義 
    VMPは単なる計画書ではなく、リスクに基づき科学的に妥当な「コントロールされた管理ツール」として機能することが求められる。また、変更管理はバリデーション済み状態を維持するための重要なメカニズムと位置づけられている。

2. 洗浄バリデーションの大幅拡充と査察基準の厳格化
今回の改訂で最も大きく直接的な影響を受ける分野が「洗浄バリデーション(特に多製品共有設備・受託製造)」である。査察官の視点は「結果として綺麗になっているか」から、「プロセス全体が科学的に設計・管理され、常に同じ清浄性が保証されているか」という品質リスクマネジメントの観点へと大きくシフトする。

 

 

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