ラボにおけるERESとCSV【第141回】

FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(111)


7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。

■ QQQQQ社 2025/6/6
施設:原料工場
査察官:Jacob G Lutz

■ Observation 2
製剤材料の粒子径分布の計算に使用するシステムが、生成した生データと解析データを削除することができる。この削除操作を記録するよう、監査証跡が設定されていなかった。このシステムにより生成されたデータのバックアップ実施はXXXであった。

★解説-1 (監査証跡について)
生データと解析データの削除操作を監査証跡に記録するよう設定されていなかったとのことである。試験や製造の実施・照査・承認を行う職員がこれらのデータを削除して、良いとこ取りをしてはいけない。そのような削除ができないよう、権限設定すべきなのは言うまでもない。しかし、このシステムはそのような権限設定ができなかったのかもしれない。そのような場合、試験や製造の実施・照査・承認を行う職員がこれらのデータを削除して、良いとこ取りをしていなかったことを、監査証跡により確認する必要がある。しかるに、削除の操作を監査証跡に記録するよう設定していなかった。そのため、データの信ぴょう性を保証できないと指摘された。

データの削除操作は、試験や製造の実施・照査・承認に関わらないシステム管理者のみに許可すべきである。しかし、試験や製造に中立であり(興味がなく)不正なデータ操作を行う動機を持ちえないシステム管理者といえども、不正なデータ操作を行うことがありうる。例えば、試験や製造の実施者が誤入力データを確定してしまった場合、誤入力データの修正を正規の手続きを踏まずにシステム管理者に依頼するような場合である。したがって、不正なデータ操作を行う動機を持ちえないシステム管理者の監査証跡も、レビューしなければならない。システム管理者の監査証跡をQAがレビューしてないと、査察において指摘される。このレビューはロットごとの日常レビューではなく、抜き取りで実施してよい。

QAレビューに関する補足説明
① QAレビューはロットごとのレビューではなく、QCレビューが適切に行われているかを抜き取りで監査することでよい(PIC/S査察官向けDIガイダンス§9.8、MHRAのDIガイダンス、WHOのDIガイダンス)。
② QAレビューのポイント
A)   QCにおけるデータレビューが手順どおり実施されていることを確認
B)  データインテグリティを保証できるデータレビューか確認
C)  システム管理者権限のもとになされた操作の正当性を確認
D)  良いとこ取りをしていないことを確認
E)  不都合な事象を隠蔽していないことを確認
 

★解説-2 (バックアップについて)
「データのバックアップ実施はXXXであった」と指摘されているが、何が指摘されたか明記されていない。バックアップ頻度の適格性について言及されたのではないかと感じる。

例えば、月1回のバックアップであれば、最悪1か月分のデータを失うことになる。最悪となる1か月分のデータを失った場合の対応を規程し、月1回のバックアップで問題がないことを説明しておく必要がある。このような考え方でバックアップ頻度を決めるとよい。

 

 

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