最新コスメ科学 解体新書【第26回】
小腸壁と口腔内の濡れ② 粘膜を一瞬で濡らすには?
小腸壁や舌の表面のような超親水的な粘膜のモデルを、寒天ゲルを使って作ることができました。表面に階層性の凸凹を刻むことによって素早く水が濡れ広がる超親水現象を実現することができたのです [1]。研究の成果はアメリカ学会の界面化学の専門誌に掲載され、やれやれ、という感じでした。
次にわれわれが目指したのは、濡れの速度をさらに加速したり、遅くしたりする技術の開発でした。粘膜の表面を一瞬で濡れ広がる技術ができれば、食べ物の味や香り立ちを鮮やかにしたり、医薬品の効きを加速することができるし、逆にこれを遅くすることができれば、栄養吸収を抑制して、もしかしたらまったく新しいダイエットテクノロジーができるのではなかろうか??? わたしの頭の中に、そんな妄想が渦巻いたのでした。界面化学の研究会でこのアイデアを話してみたところ、みんな面白がってくれているようだったので、本格的に実験を開始することになりました。
まず試してみたのは、界面活性剤を添加することでした。洗剤の主成分である界面活性剤は固体表面に吸着して水との親和性を高めることが知られているので、濡れひろがりを加速するのではないかと期待したのですが、寒天ゲルの表面では実際には大した効果は観察されず、界面活性剤の種類によってはむしろ濡れを抑制する方向に働いてしまったのでした・・・。
あらゆる素材を片っ端から試す中で、一気に濡れを加速する材料を見つけることができました。それはアルコールです。医薬品や化粧品業界ではあまりにありふれた材料で、ちょっと拍子抜けしたのですが、エタノールやプロパノールのような短めのアルキル鎖を持つアルコールを適度な濃度で添加した時の加速の威力は圧倒的だったのです [2]。さらにちょっと面白かったのは、アルコール水溶液を寒天ゲル表面に滴下して高速カメラで観察したところ、最初は普通の水と同じくらいの速度で濡れ広がっていたのが、0.1秒後くらいから一気に加速して濡れ広がる様子が記録されていたのでした。
コメント
/
/
/
コメント