【解説】GMP適合性調査の実践的対応ガイド ~本質的な法令遵守を踏まえたGMP適合を目指して~【第8回】
最近の指摘事項の傾向と対策(その3)― OOS処理と承認書との整合性
GMP適合性調査において、企業の品質保証に対する姿勢が最も顕著に表れるのが、「規格外(OOS)結果への対応」と「承認事項の遵守」です。これらに関する不備は、患者の安全や規制遵守の根幹を揺るがすものとして、極めて重大な指摘に繋がる可能性があります。
1.OOS処理:ブレーキ機能は有効か
試験検査におけるOOSは、品質保証システムのブレーキ機能が正常に作動しているかを示すものです。その処理の適切性は、調査で最も厳しく精査される項目と言えます。
- 指摘事例:
- 科学的な調査を行わず、安易に「ラボエラー(試験操作ミス)」と結論付けて再試験を行い、最初のOOS結果を無効にしている。
- OOSが発生し、長期間に亘り対策などを練り、製造販売業者へ速やかに報告していない。
- 安定性モニタリングでOOSやOOT(傾向からの逸脱)が確認されたが、市場にある製品への影響評価や回収の検討がなされていない。
- 再発防止のためのCAPAが不十分で、同様のOOSが繰り返し発生している。
- 対策のポイント: OOSが発生した場合、「出荷したい」「回収したくない」というバイアスを排除し、科学的かつ客観的な原因究明を徹底することが重要です。原因が特定できない場合は、製造工程に問題があった可能性を疑い、影響範囲の特定(他ロットへの拡大調査など)を含めた慎重な調査が求められます。
2.承認書との整合性:全ての活動の拠り所
承認書は、規制当局と企業との間の「法的な約束事」です。承認された内容と異なる方法で製造・試験を行うことは、GMP違反であると同時に薬機法違反に直結します。
- 指摘事例:
- 承認書に記載のない工程を追加している、または記載されている工程を実施していない。
- 承認書とは異なる標準品や試薬を使用している。
- 変更が、承認事項に影響を及ぼすにも関わらず、適切な変更手続き(一部変更承認申請など)を行っていない。
- 承認審査の過程で変更された内容が、現場の製造指図書やSOPに正確に反映されていない。
- 対策のポイント: 定期的な整合性点検を、文書上だけでなく、必要に応じて現場の実際の作業まで踏み込んで確認する必要があります。また、変更管理のプロセスにおいて、必ず承認書への影響を評価するステップを組み込み、QA部門がそれを確実にレビュ-・承認する体制を構築する必要があります。承認事項の遵守は、品質保証の土台です。
OOS処理と承認事項遵守は、いずれも企業の誠実さと科学的妥当性が問われる領域です。日頃からこれらの重要性を全社で共有し、圧力にも屈しないような適切な品質保証体制を築き上げることが求められます。
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