【2026年2月】医薬品品質保証こぼれ話 ~旅のエピソードに寄せて~
執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話」
第24話:時間の大切さと予防的対応
令和8年(2026年)が明け、21世紀も“第2四半期”に突入しました。早いですね!歳を重ねるごとに時間の経過を早く感じるようになり、残された人生の時間を考えると、一種あせりのようなものを感じることさえあります。若い頃は日々の生活に追われ、先の人生の時間のことなど考えることもなく過ごしていましたが、明日の命は年齢に関係なく誰にも保証されていないことを考えると、時間は誰もがすべからく大切にすべきではないでしょうか。
時間の大切さは古来より認識され、“光陰矢の如し”、“歳月人を待たず”など、時間の経過の早さに対する感慨を表現したことわざや、“少年老いやすく学成り難し”、“一寸の光陰軽んずべからず”など、日々、時間を無駄にせず大切にして過ごすことの重要性を諭す格言は枚挙に暇がありません。ちなにみ、西暦671年に天智天皇が水時計(漏刻)で時刻を告知された6月10日は“時の記念日”に制定され、今も時間の大切さや時間を守ることの重要性が啓発されています。
上記のようなことわざや格言が生まれた背景には、先人たちも現代人と同様に歳を重ねるにつれて時間の経過の早さを感じ、また、その時間を無駄にせずに過ごせたかといったことへの反省もあったのではないでしょうか。何百年も前の時代と今とでは、生活様式や社会的事情が大きく異なりますが、新しい年を迎える時期になるとそういった感慨を抱くのは、いつの時代も変わりないのではないかと思われます。また、そういった振り返りが、次の一年を前向きに過ごすための原動力にもなっているのではないでしょうか。
“時間を無駄にする”ということの意味には、“単に無為・無駄に時を過ごす”ことのほか、“喫緊の課題などに着手せずに対応しない”、あるいは、“着手してもそれを積極的に推進せずに、適時に成果として実現できない”といったケースも該当するのではないでしょうか。言い方を変えれば、“やるべきことをやらずに時間だけが経過する状況”、と言うことになりますか。
前者は、暇を持て余してスマホの画面を延々と見続けることや、巷間見られる“多人数による実りのない長時間の会議”などがその典型でしょう。後者は、たとえば製薬工場について言えば、自己点検や行政査察で指摘された、“設備や工程の要改善事案を長期間放置し、改善に向けて協議もせず対策を講じない”、といったこと。また、同様に、内部監査などで、“製造販売承認書に記載の試験方法と実際に行われている製品試験の手順の食い違い(齟齬)が指摘されても、変更申請など”法的整合化作業”に着手しない”、といったことが挙げられます。
このこと(やるべきことをやらない)に関して医療面を俯瞰すると、次のような課題が想起されます。診療報酬や薬価に関する課題、医療費の増加、病院の経営難、産科小児科など一部の診療科における医師不足、医療従事者の長時間労働、介護従事者の低賃金、医薬品不足、創薬力の低下、ポリファーマシー (重複の受診・投薬)など、課題は多岐にわたります。これらの問題は広く認識され、すでに産官学の関係者で議論され、改善にむけて一部に進捗もみられますが、そのレベルには未だ、“求める側の要求水準との間に乖離”があるようです。診療報酬の引上げや介護従事者の賃上げ、医薬品不足対策などはその代表ではないでしょうか。
対策の考え方としては、パッチワークのように個々の課題の綻びを個別に是正するのではなく、これら諸々の課題が“相互に連関する”ことに着目し、“構造的な問題”と捉えて対策を講じることが大切かと思われます。そのためには、既存の制度や慣行にとらわれず、問題の核心に根差した抜本的かつ大胆な対策を打つことも視野に入れる必要があるでしょう。少子高齢化がさらに進行する中、国際情勢にも大きな変化が見られています。こういった状況を背景に、既存の制度による対応に限界が見られ、これまでの制度の延長線上に解決策を見出すことが困難になってきている状況も直視する必要があります。
“相互に連関する課題”に関して言えば、たとえば、“医療費の増加”は、高齢化社会にともなう“軽症状での受診傾向(受診者増)や過剰投薬・ポリファーマシー”などもその要因の一つと考えられることから、こういった状況に対し施策として積極的に対策を講じれば、医薬品不足の改善と相まって医療費の低減にも寄与するでしょう。このような課題への改善対策は患者個々の投薬履歴の管理が重要な一つの鍵になりますが、“お薬手帳”のような紙媒体により未だにアナログ管理している現状から推して、そう早い時期の改善は見込めないでしょう。ちなみに、デジタル技術の進展がめざましい今の世の中で、紙で投薬履歴を管理しているのは先進国では日本だけと聞きます。デジタル管理への早期の転換が望まれます。
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