【解説】GMP適合性調査の実践的対応ガイド ~本質的な法令遵守を踏まえたGMP適合を目指して~【第7回】
最近の指摘事項の傾向と対策(その2)― PQR・供給者管理・バリデーション
GMPシステムの有効性は、個々の活動の質によって決まります。中でも「製品品質照査(PQR)」「供給者管理」「バリデーション」は、プロセスの妥当性と継続的な改善を保証する上で重要な活動であり、調査においてもその実効性が厳しく問われます。
1.製品品質照査(PQR):単なるデータ収集で終わらせない
PQRは、1年間の製造・品質管理の記録を包括的にレビューし、製品そしてプロセスの安定性を評価し、改善の必要性を特定するための活動です。しかし、その本来の目的が忘れられ、形式的なデータ収集に終始しているケースが散見されます。
- 指摘事例:
- 製造実績がないことを理由に、PQRを実施していない(安定性モニタリング結果など、レビューすべきデータは存在するはず)。
- 規格内であっても、OOT(傾向からの逸脱)や品質低下のトレンドが見られるにも関わらず、考察や改善措置に繋がっていない。
- 統計的な手法を用いず、単にデータを並べて「問題なし」と結論付けている。
- 逸脱や変更管理、CAPA(進捗管理など)といった、重要な品質イベントのレビューが漏れている。
- 対策のポイント: PQRは「製品の製造工程・試験工程等の健康診断」と捉え、未然防止の観点から積極的に活用する姿勢が求められます。工程能力指数(Cpk)などの統計的手法を用いてプロセスの安定性を客観的に評価し、望ましくない傾向があれば、その原因を深掘りして改善に繋げることが不可欠です。
2.供給者管理:サプライチェーン全体での品質保証
原材料の品質が最終製品の品質を決定します。改正GMP省令では、原料供給者や外部委託業者の管理が明確に義務付けられました。
- 指摘事例:
- 外部委託業者(校正業者、試験委託先など)が管理対象リストから漏れている。
- 供給者の定期的な再評価(監査など)が計画通りに実施されていない。
- 製造販売業者と製造所で監査情報が共有されておらず、一貫した管理ができていない。
- 海外製造所からの変更連絡が国内管理人などを通じて製造業者や製造販売業者に適切に伝達されていない。
- 対策のポイント: サプライヤー管理は、品質保証部門と製造部門、そして製造販売業者が緊密に連携して行う必要があります。取り決めを締結するだけでなく、リスクに応じた定期的な監査や評価を実施し、その結果を記録・共有するサイクルを確実に回すことが重要です。
3.バリデーション:科学的根拠に基づく品質の作り込み
バリデーションは、製造プロセスが恒常的に期待される品質の製品を製造できることを科学的に検証し、文書化する活動です。
- 指摘事例:
- プロセスバリデーション(PV)が完了する前に、商業生産を開始している。
- PVで含量の均一性などに問題が見つかっているにも関わらず、適切な原因究明や追加検証、改善などを行わずに製造を継続している。
- 製造設備の変更に伴う再バリデーションが実施されていない、または計画が不十分である。
- 洗浄バリデーションにおいて、ワーストケース(最も除去しにくい製品など)の選定根拠が不明確である、一部の機器の評価が漏れている。
- 対策のポイント: バリデーションは、承認前調査で必ず詳細に確認される最重要項目の一つです。特に、技術移転やスケールアップ時のバリデーションは、その後の安定生産を左右します。開発段階からの知見(ナレッジマネジメント)を活かし、科学的根拠に基づいた計画を立て、確実に実行することが求められます。
執筆者のGMPコンサルタント 田中が下記セミナーを担当します。
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