GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第60回】

品質について。
品質
1.コスパ
「コスパ」が高いや悪いということをよく耳にする。しかし、製薬業界ではあまり耳にはしない。「費用対効果」と言われると、役所に勤務していたころ、ちょうど、製造販売業の制度が始まるころ、多くの薬事製造業が旧法での許可取得したいため、許可更新が増加し、調査に追われた。製造販売業制度がスタートした5年後、記載整備の期限であり、みなし期間が終了するときも調査に追われた。制度の変更で、薬事講習会も盛んに行った頃、薬務課長から費用対効果はあるのか、と問われた。要は、調査や講習会などもっと効率的に行えということだが、正直、その頃、神奈川県庁ではGMP査察に追われ、生産指導班(医薬品、医療機器、化粧品等の製造販売業、製造業の許認可、監視指導を担当するグループ)のメンバーは、ほとんど席にいない状況であった。これでは、コスパが悪いことになろう。
私は、よく製薬企業におけるQA業務やGMP活動は金食い虫だと、発言する。薬事に関連した品質保証は、目に見えない。医薬品の有効性、安全性、品質はできて当たり前である。特に、日本人は、できて当たり前なことに金を出したがらない。サービスは無料が当たり前である。しかし、最近のGMP違反事例などを考えると、ダブルチェックの徹底や従業員への教育訓練など、人手がかかり、時間がかかり、いかに、コスパが悪いと思われるだろう。だから、品質保証とは、金食い虫と言いたくなるわけである。どこまで行えばいいのか分からないからである。品質を維持するため、安全を守るため、これだけやれば大丈夫はない。最近の医療費高騰の中、薬価の問題もあり、製薬業界も厳しい状況である。医薬品の有効性、安全性、品質を担保しつつ、低コストに抑え、医薬品を供給するかを考えなくてはならない。それこそ、コスパを高めなければならない。しかし、患者がこの薬はコスパが高いと感じることはないであろう。
最近、サプリメントが初回限定で割引して販売するCMを目にする。以前、神奈川県庁勤務の頃、薬局やドラッグストアの許可調査や一斉検査で、よく耳にしたのだが、サプリメントは安いとかえって売れない。ある程度の値段でないと、効き目がないと思われるようだと聞いた。最近は、消費者の動向も変わったのかも知れないが、初回の割引で効き目を実感できて、継続したいと購入意欲がわくのかもしれないが、これこそコスパが高いと消費者に感じさせる効果があるのだろう。
医薬品とサプリメントは似たようなものでありながら、患者として、消費者として、求めている品質は異なるであろう。しかし、製薬業界も、コスパについて考えるべき時が来たかもしれない。
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