医薬品,医療機器滅菌の新しいトレンド“放射線滅菌”【第9回・最終回】

2016/04/01 製剤

山口 透

 

 滅菌バリデーション基準やISO各滅菌規格、ガイドラインなどが標準化され、放射線滅菌バリデーションは比較的容易に実施できるようになりました。ただ、実際に滅菌バリデーションを実施すると、滅菌工程開発、滅菌条件設定、最大許容線量設定、バイオバーデン測定などで多くの問題が発生します。経験があればすぐに対応ができるのですが、最初は試行錯誤の連続だと思います。本稿では筆者が経験した事例を紹介し、その有効な対策についていくつか紹介します。ご参考になれば幸いです。


 新たに放射線滅菌バリデーションを導入する場合、最初に、滅菌バリデーション基準やISO11137を参照し実施計画を立てます。導入の理由はさまざまで、新規製品の滅菌法として、または他の滅菌方法からの変更などがあります。滅菌バリデーションの考え方は各滅菌法で共通なのですが、滅菌の作用が異なることから注意すべき事項は異なります。放射線が与える影響として、ポリマーなどの材質劣化、医薬品成分の分解、着色などがあり、放射線滅菌の導入においてはこれらの問題点を解決する必要があります。1)また、滅菌対象が無菌製品であり、リスクが高いことから対策は一時的な応急措置ではなく恒久的な対策が必要と考えます。下記に、滅菌バリデーション導入時に発生頻度が高く、また、重要度が高い事項をリストアップし、現状において有効な対策を記載します。

1. 滅菌線量が高く設定される。
 滅菌線量が高く設定されると、最大許容線量も高くなり、製品に与えるダメージが高くなります。よって、滅菌線量はできるだけ低くすることが重要です。放射線滅菌の場合は、滅菌線量はバイオバーデン数によって設定されます。つまり、バイオバーデンが少ない場合は滅菌線量が小さくなり、バイオバーデンが多い場合は滅菌線量が高くなります。よって、滅菌線量を小さくするにはバイオバーデンをより少なく安定的に管理することが必要になります。バイオバーデンを低くする対策については第7回をご参照下さい。
 

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執筆者について

山口 透

経歴 コンサルタント(滅菌、微生物管理、放射線改質)
元日本電子照射サービス(株) つくばセンター 技術担当部長
1955年生、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社にて医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品の開発(微生物関連、試験開発及びEOG滅菌バリデーション)、品質保証、薬事業務に従事し、2001年より日本電子照射サービス株式会社にて、電子線による改質、滅菌技術の研究開発、及び医薬品、医療機器等の電子線滅菌導入に係る滅菌条件設定、微生物、理化学受託試験を担当、2015年退職後、コンサルタント業(滅菌、微生物管理、放射線改質)開始、現在に至る。
元ISO TC198 WG8国内検討委員、 元ISO TC85 WG3 国内検討委員、元各JIS化検討委員、日本防菌防黴学会、高分子学会会員。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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