再生医療等製品の品質保証についての雑感【第88回】
第88回:細胞製造の品質マネジメントシステム (18)
~ 【閑話】細胞製造における逸脱管理とアノーマル状態との相関事例 ~
はじめに
細胞製造プロセスの特性は、当研究室の紀ノ岡正博先生の細胞製造論の概要では、「一度乱れだすともっと乱れる」と説明されます。プロセスの安定化研究における重要な課題ですが、ポイントは、一文に2つの「乱れ」が存在していることです。具体的に、後者の「もっと乱れる」は製造プロセスの「逸脱」であり、製造管理のトレンドからの逸脱(OOT)を大きく超えた逸脱で、通常言われる、異常(abnormal)が生じた状態を指します。
対して、前者の「乱れだす」は、前回お話しをしたアノーマル(anomalous)な状態を指しており、細胞(内部)が正常な状態から外れていることを意図します。前者の「乱れ」の発生段階では、前回お話しした「ゆらぎ」により生じる一時的なものを含み、細胞が逸脱していても見かけ上現状を維持しており、製造プロセス自体には異常は検知されず、細胞にかかる負荷が解消(環境特性がリセット)されれば元の正常な状態に戻る、可逆の可能性も考慮されます。一方で、負荷が解消されず細胞のアノーマルな状態が継続した場合、上述の「もっと乱れる」へと発展し、不可逆の逸脱(不適合)へと至ります。
今回はこのようなアノーマルな状態から誘導される細胞の逸脱事例を評価した研究発表の1つを、以下に、事例として紹介します。
● 細胞遊走の不均一性による細胞の逸脱に関する研究
接着細胞の培養では、細胞は基材面に接着し、面上で遊走します。細胞は、遊走と分裂を繰り返すことで適切に増幅しますが、細胞間の密度が高くなると、細胞間の接触阻害により細胞遊走が遅くなり、分裂が行われにくくなります。(いわゆるコンフレントの状態です。)ここで、細胞遊走が過度に低下した場合は、細胞内の「骨格」が乱れ、メチル化などの望ましくないアノーマルな状態(乱れ出す)が生じます。この状態が継続的に維持されることで、そのアノーマルな状態が固定し、個々の細胞が逸脱することで、全体プロセスに影響が生じ、製造プロセスに逸脱(もっと乱れる)が生じます。
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