今の時代に求められるGMP監査 ~製造所と通じ合うために~【第3回】
特質の現場実践 ― 監査を「価値ある対話」に変えるコミュニケーション術
前回(第2回)では、ISO 19011が定める「監査員に求められる13の特質と行動」について触れました。
第3回となる今回は、これらの抽象的な概念を、実際のGMP監査の現場でどのように実践的なアクションへと変換していくのかを解説します。
製造現場から寄せられた「不満」を「信頼」に変えるための、具体的なコミュニケーションの引き出しを増やしていきましょう。
1.監査準備とスケジューリングにおける実践
監査は、現場に足を踏み入れる前から始まっています。
事前準備の段階で、相手への配慮(特質)をどう発揮するかが問われます。
- 「知覚の鋭さ・決断力」を意識する: 今回の監査が何の目的で、どのサブシステムを確認するのかを明確に考えた上で、現場に要求する事前資料を必要最小限に絞り込みます。現場にしかない原本は当日確認するなど、情報の仕分けを決断します。
- 「倫理的・決断力」を意識する: 製造現場の負担を優先したプランニングを行います。事前に工場のシフトや生産計画を聞き出し、最も負担の少ない時間帯にプラントツアーを組み込むといった配慮が必要です。また、部門ごとの負担も考慮し、監査項目を事前に伝えて準備時間を確保してもらうようコントロールします。
2.現場での振る舞いと質問のテクニック
いざ現場に入った際、監査員の言葉一つで相手の態度は硬化もすれば、協力的にもなります。
- 「外交的・協力的」を意識する: 唐突に質問をぶつけるのではなく、質問の背景や意図を先に説明します。「粗探しではなく、事故を防ぐための防波堤が機能しているかを確認したい」と目的を宣言することで、相手の警戒心を解くことができます。
- 「倫理的・心の広さ」を意識する: 形式的な書類の不備よりも、無菌性や混同防止といった「患者に直結するリスク」に焦点を当てます。重箱の隅をつつくような指摘を、自ら律する勇気(倫理観)を持つことが重要です。また、「私の経験では…」という個人的な感覚で語るのではなく、「GMP省令第〇条の逐条解説ではこう記されています」と客観的な根拠(法令やガイドライン)を提示して対話します。
- 「適応性・協力的」を意識する: 「これはダメだ」と切り捨てるだけで終わらせてはいけません。「この設備の制約の中で、どうすればリスクを最小化できるか?」を、現場の技術者と一緒に知恵を絞って考える姿勢が共感を生みます。
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