【2026年8月】医薬品品質保証こぼれ話 ~旅のエピソードに寄せて~

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話
 

第30話:知識から理解へ―「工程理解」が支える製造管理と品質保証の基盤―


・要約
本稿は、医薬品の製造管理・品質管理において、単なる知識の習得ではなく「理解すること」の重要性を論じたものである。GMP教育においては、工程の流れを覚えるだけでなく、各工程の役割や品質への影響、管理すべき条件を理解することが重要である。「工程理解(process understanding)」は、ICH Q8、Q9、Q10に示される科学的理解に基づく品質保証の中核概念であり、安定した品質確保と現場対応力を支える基盤となる。

・本文
6月上旬(2026年)、「飛鳥・藤原の宮都」がユネスコの諮問機関・イコモスから世界遺産登録にふさわしいとの勧告を受け、7月下旬の世界遺産委員会で正式に登録される見通しとなりました(6月6日、文化庁発表)。登録されると、日本で27番目、奈良県では4つ目の世界遺産となります。

飛鳥(自治体名の公式表記は「明日香」)は日本誕生の地であり、歴史愛好家でなくても多くの日本人が興味を抱く地域ではないでしょうか。しかし、こういった特別な地域でなくとも、古今東西の歴史を知ることは本来、興味深いものです。ただ、学校教育で歴史と言えば、各時代の重要な出来事が発生した年をまずは暗記し、深く理解することを怠っていた印象があります。

歴史教育の目的は、その出来事が“いつ起きたか”を知ることより、“なぜ起きたか”、そして、それが世の中にどのような影響を与え、その結果、時代がどのように変化していったか、といったことを理解し、その叡智を今に活かす、といったところにあります。入試のためには覚える必要もあるわけですが、本来、出来事の発生年を記憶するだけでは何の意味もありません。極論すれば、上記のように、起きた出来事の意味を「理解」しなければ、学ぶ意味すらないはずです。

これと同じことが、GMP教育で行われてはいないでしょうか。例えば、ある医薬品の製造工程に関する教育の場合、一般には、工程の流れをフローチャートなどで示し説明するわけですが、ただ、これを知識として記憶するだけでは十分とは言えません。工程全体の中の単位工程それぞれがどういった意味を持ち、次の工程に引き継がれ、最終的に製剤・製品として完了するまでの流れの理解、つまり、「工程の理解」が重要となります。各工程で進行する製剤化に向けての要件(中間製品としての品質特性や管理要件など)を、関係する設備機器を含めイメージでき、よく理解することが大切です。

その上で、「重要工程」(品質を決定づける特に重要な工程)がどの工程であり、管理すべき条件が何であるか、といったことを確認し、理解を深めることが本来のGMP教育ということになります。こういった視点でGMP教育を行い、実践の場を通しての経験(OJT)を重ねることではじめて、現場戦力として信頼される職員となり得ます。

 

 

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