【2026年7月】医薬品品質保証こぼれ話 ~旅のエピソードに寄せて~

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話
 

第29話:“健康食品GMP”が問いかけるもの ― 制度だけでは守れない“安全性”を支える、人と組織文化 ―


・要約
サプリメントの品質と安全性確保に向け、“健康食品GMP”の法制化が動き始めた。昨今の健康被害事案を踏まえた重要な取り組みと言える。しかし、GMPは単に規制や管理基準を整備するだけでその目的を達成できるものではない。医薬品においても、制度が整備されているにもかかわらず品質問題が発生している現状を踏まえれば、重要なのは仕組みを実効的に機能させるための“人と組織のあり方”であることが理解できる。本稿では、“健康食品GMP”法制化の動きを契機として、品質保証における制度設計と、それを支える組織文化の重要性について考察する。

・本文
6月10日(2026年)、朝7時のNHKテレビのニュースで、サプリメント(以下、「サプリ」)、いわゆる“健康食品”の「GMP(適正製造規範)適用」に関する報道がありました。以前よりその必要性は関係者から指摘され、すでに自主的に実施している企業もありますが、小林製薬の紅麹事案を契機として(*注1、注2)、その必要性が広く認識され、この動きが加速したものと考えられます。サプリの多くは錠剤やカプセルなど医薬品と同じ形状であり、さらに表示や広告によって“効果や効能”が暗示される現状を踏まえると、この動きの重要性が理解できます。

*注1: 新・医薬品品質保証こぼれ話「第50話:医薬品等の安全性確保とガバナンス」
*注2: 医薬品品質保証こぼれ話~旅のエピソードに寄せて「第1話:設備機器の維持管理と人命の安全確保」

サプリは医薬品と同様、摂取され人の体内に取り込まれるものである以上、安全性の確保は不可欠です。その上、医薬品は原則として症状や病気が軽減あるいは治癒すると服用が中止されるのに対し、サプリは数か月、あるいは年単位で継続して摂取されるケースも少なくありません。そのため、本来、上市前の安全性確保のための検討は十分に行われるべきものです。しかし現状では、これに対する法的拘束力を持つ制度はなく、各社の判断に委ねられており、医薬品において開発段階で実施される安全性確認と比較すると、十分とは言い難い状況にあると推察されます。

ただし、行政がこれまで何も対応してこなかったというわけではありません。2005年には、健康食品の安全性確保のための“自主点検に関する考え方やガイドライン”(*注3)が通知されています。ここに示されている考え方やガイドラインに沿って製造を推進している企業も少なくないと考えられますが、行政による監視や確認が限定的であることから、その実施状況にばらつきがあることは否めません。

*注3:「錠剤、カプセル状等食品の適正な製造に係る基本的考え方について」及び「錠剤、カプセル状等食品の原材料の安全性に関する自主点検ガイドライン」について:食安発第0201003号 平成17年2月1日。

 

 

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