【第5回】オランダ通訳だより

「水とつきあう」

新年初めての投稿になります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
年始の震災、航空事故で亡くなられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。

日本のお正月はあまり明るい雰囲気ではなかったと思いますが、オランダのクリスマスシーズンも、10年に一度の河川増水で緊迫状態でした。連日の風雨で北部、中部の水位が上昇しているところに、スイスの雪解け水がドイツから大量に流入したのです。道路や自転車道が冠水した地域では、一家団らんのクリスマスを返上して、土嚢を積む人たちの姿が見られました。

このように、地球温暖化の報いは、空、海だけでなく、山からもやってきます。異なるタイミングで発生すれば、逼迫せずに対応できるのでしょうが、今回は重なってしまいました。異常増水した流域は、もちろんすべてのポンプ場がフル回転でした。

なんと、ユネスコ世界遺産に登録されている、1920年生まれの蒸気式ポンプ場Woudagemaal(ヴァウダ・ヘマール)まで駆り出されました。平時は、学童や観光客が訪れる歴史的建造物で、ポンプを稼働させる回数は1年に片手で数えるほどです。でもこの12月は、クリスマスを挟んで10日間にわたってフル稼働しました。

100歳を超えても現役というのに驚きましたが、調べてみると、1870~1880年に設置された現役の古参が20基近くありました(!)。150年前のインフラを、きちんと保全していつでも使えるようにしてあるとは・・・。治水国家の神髄を見せていただきました。


さて、この国の気象の極端化は、冬場だけでなく夏場にもはっきり表れています。日照時間が、ここ10年で年間100時間以上増えました。20年前は、1週間晴天が続くなどあり得なかったのですが、近年ではそれも珍しくなくなりました。

たとえば2022年の夏は雨が降らず、例年に比べて300㎜の水不足を記録しました。水不足といえば、飲料水や農業・工業用水の不足を連想しますが、オランダでは、さらにもうひとつ、深刻な問題に発展します。

当地に来られた人なら、一度は目にされていると思いますが、海沿いや道路沿いに、芝生に覆われた土手があります。春から秋にかけては、その斜面で羊の群れが草を食んでいますが、あれも堤防です。水辺にあるものも、そうでないものも、すべて堤防としての機能を備えていると考えていただいて結構です。水辺にある堤防が決壊しても、内陸側にある第2の堤防が持ちこたえたら、後背地への洪水は食い止めることができます。
 

 

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