基礎から学ぶeCTD【第5回】

はじめに
 2020年4月より日本でも新医薬品の承認申請資料をeCTD形式による提出を義務化された。PMDAは、eCTD国内情報提供ページ(https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0009.html)にて「eCTD国内運用に関する参考資料」としてeCTD提出状況を公開している。2019年9月30日までのデータが公開されており、2018年度は190件のeCTD提出が行われており、そのうち正本申請が188件でほぼ99%にあたる。
 PMDAは、年間の承認申請数を公開していないが、2017年度の承認数は104、2018年度は118である。審査期間を1年と想定すると2016年のeCTD申請数が146、2017年が153である。eCTD提出数にはライフサイクル申請が含まれていることから90%を超える承認申請がeCTD形式で行われていると推察される。従って、既に、多くの製薬企業ではeCTDを経験していると思われる。今回は、eCTD義務化に合わせて、復習を兼ねて、eCTD形式による申請の留意すべき事項について解説する。

1.    eCTD形式による承認申請で遵守すべき規制とは
 eCTDの義務化とは、医薬品の製造販売承認申請を電子的に行うことを求めている。このことは、ER/ES指針(薬食発第0401022号厚生労働省医薬食品局長通 医薬品の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について)の適用範囲である「薬事法及び関連法令に基づいて、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の承認又は許可等並びに適合性認証機関の登録等に係る申請、届出又は報告等にあたって提出する資料として電磁的記録又は電子署名を利用する場合」に相当する。そもそもこの通知が、日本においてeCTDの施行に合わせて、発出されたもので、eCTDとは縁が深い規制である。
 GMP Platformの読者の皆さんにとって馴染み深いER/ES指針と思われるが、eCTDではどのように対処をすればよいのであろうか。具体的な対処法について、次に解説する。

2.    eCTDのER/ES指針対応
 ER/ES指針では、電磁的記録(電子記録と同義)に対して、真正性、見読性、保存性を求めている。指針では、真正性について、「電磁的記録が完全で、正確で、信頼できるとともに、作成、変更、削除の責任の所在が明確であること」と規定しており、見読性は「電磁的記録の内容を人が読める形式で出力できること」、および保存性は「保存期間内において、真正性及び見読性が確保された状態で電磁的記録が保存できること」とある。これらの要求事項をeCTDが満たすためには、真正性に対しては「eCTD編纂過程で申請資料の内容が変更されないことを保証」、見読性に関しては「PDF化、あるいはeCTD編纂過程で人が読めることを保証」および保存性については「承認を受けた日から5年間、あるいは再審査を受ける医薬品では再審査が終了するまでの期間、真正性と見読性を保証」することである。つまり、これらのことをリーフファイルの作成ならびにeCTD編纂過程で実行することになる。前者は、eCTD編纂プロセスにQCを行う工程を追加する。具体的には、PDFファイルを作成後にeCTDの電子的仕様への準拠確認、ならびに文字化け等の見読性の確認を行うことである。見読性の確認は、ドキュメントのコンテンツレビューの際にPDFファイルを用いて行うことでも可能である。後者は、eCTD編纂過程において、リーフファイルに外部リンクを付与する等のリーフファイルに対して変更を加える作業を行う前後でコンテンツに対する変更がなされていないことを確認するプロセスを追加することである。更に、リーフファイルだけでなくeCTDそのものも電磁的記録に相当するので、eCTDのメタデータに対する確認プロセスを提出前に行う必要がある。
 作成したeCTDは、提出前に再度、見読性について確認する必要がある。上記のプロセスで確認した見読性は、あくまで申請者の作業環境下における確認であり、PMDAの作業環境下での確認にはなっていない。電子的ファイルは、OSや使用するソフトウェアのバージョンによっては、開くことがなきないとか完全な互換性が保たれない等の問題が生じることはよく知られている。そのことを考慮して、PMDAは、「はじめに」で示したeCTD国内情報提供ページにて、「eCTD審査用PC標準環境」を公開している。申請者は,先ずPMDAが同じくeCTD国内情報提供ページで公開している「eCTD検証ツール」を用いて作成したeCTDインスタンスに問題がないかを確認し、次にeCTD審査用PC標準環境に準拠した環境で、eCTDの見読性の確認を行う必要がある。
 

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