【2026年11月】医薬品品質保証こぼれ話 ~旅のエピソードに寄せて~

執筆者の連載をまとめた書籍を発刊「医薬品品質保証のこぼれ話」
 

第32話:核となる優れた人材の重要性
―人の和を育み、品質文化を醸成する要―


・要約
本稿では、アマチュアオーケストラの演奏会での体験を通じ、組織の核となる優れた人材の重要性について考える。医薬品品質保証においても、専門性と経験を備え、周囲から信頼される人材は欠かせない。さらに、ICH Q10やQ9(R1)、米国FDAのQMMプログラムの考え方を踏まえ、経営層から現場まで、組織のあらゆる階層の職員が品質への取り組みに貢献することの大切さを述べる。こうした取り組みを通じて、核となる人材を起点に「人の和」を育み、知識や経験を組織全体で共有し、品質文化として根づかせることが、持続的な品質保証の基盤となる。

・本文
10月中旬、久しぶりに京都に出かけ、アマチュアオーケストラのクラシックコンサートを聴く機会を得ました。演奏曲目は、メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲、ラフマニノフの交響曲第二番などでした。前者を全曲聴くのは初めてであり、後者も、以前から関心はあったものの、これまで聴く機会がなかったため、京都まで足を運ぶことにしました。

バイオリン協奏曲は、終演後のソリストへの拍手がなかなか鳴りやまないほど素晴らしい演奏でした。しかし、このコンサートで私の目を引いたのは、チェロの首席奏者でした。若く華やかな女性ソリストとは対照的な高齢の男性でしたが、そのエネルギッシュで巧みな演奏に魅了されました。まさに「老練」とはこのことかと思いました。

今回の演奏を通して、10名で構成されるチェロパートは、この男性を核として、とてもまとまりがよいように感じました。二時間足らずの演奏を聴いただけでは、実際の人間関係までは分かりません。しかし、演奏中の動きや起立した際の表情などから、その風格や周囲からの信頼を感じ、パート全体のまとまりにも影響を与えているのではないかと推察しました。

翻って、企業など一般の組織に目を向けると、グループやチームのまとまりを支えるうえで、核となる人物の存在は大きいように思います。人材は企業の宝といわれますが、専門性や経験に優れ、周囲から信頼される人物が組織の中心にいると、メンバー間の意思疎通が円滑になり、互いに協力しやすくなります。その結果、信頼関係が醸成され、組織全体の力が引き出されることが期待できます。

では、医薬品の製造管理や品質保証においては、どうでしょうか。
医薬品の品質は、個々の担当者が優れた知識や技術を持っているだけでは保証できません。製造、品質管理、品質保証など、それぞれの部門が役割を果たすとともに、互いに情報を共有し、製品や製造工程への理解を深め、品質を守るという共通の目的に向かって協働することが必要です。ここでも、組織の核となる人材の存在が重要になります。

 

 

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