ある老兵の視点【1-4】

私が経験したGMPの半世紀
品質を保証する科学:GMPの歴史と本質


【第4回(シリーズ最終回)】
次世代の品質保証体制:QRM・KMの連動からAI導入
近年の医薬品製造設備の導入におけるトレンドは、ドキュメント偏重のCSVから、リスクベースで品質保証するCSA(Computer Software Assurance)への転換、そしてPharma 4.0(製造のデジタル化)への対応です。

FDAは従来のCSVが「文書作成に膨大な時間をかけすぎている」と問題視し、CSAという新しい考え方を推奨し始めました。2026年の初めに最終化されたFDAのガイドライン「Computer Software Assurance for Production and Quality Management System Software」 では、これからの設備導入は、どこまでをベンダーに任せ、どこを自社で厳密にテストするかという初期のリスクアセスメントが、プロジェクトのコストとスケジュールを左右する鍵となること、また設備導入時のバリデーション工数を削減し、導入スピードを向上させるため、以下の点が強調されています:

●  患者の安全性や製品品質に直結する「高リスク機能」にテスト資源を集中させ、
●  低リスクの標準機能などは、ベンダーの試験結果を活用、改めて自社で過剰な試験をせず、
● 文書化を簡素化し、エラー検出そのものに注力する。


従来は低リスクのシステムでも「手順書通りにチェックする」厳格なテストをしていましたが、CSAでは標準機能であれば高リスク機能でも簡易なテストで良いとする場合もあります。Microsoft社やSAP社等、大手ベンダーは、すでに十分なテストを行って出荷しています。CSAは、製薬企業が同じテストを繰り返すのは無駄であり、ベンダーの監査資料やテスト記録を活用し、自社テストを省略することを推奨しています。CSAは「手抜き」ではなく、「ドキュメント作成作業」から「品質保証活動」へと、リソースを再配分する戦略です。医薬の品質保証に、品質部門の責任者が利用できないような大量のクオリフィケーション文書は不要だということです。

このCSAに関する新しいガイダンスは、CDRH(医療機器・放射線保健センター)とCBER(生物製剤評価研究センター)から発行され、CDER(医薬品評価研究センター)は公式な発行元には含まれていませんが、このガイダンスは、「医療機器の製造および品質マネジメントシステムに使用されるソフトウェア」を対象としており、法的な位置づけとしては、「21 CFR Part 820」への準拠を目的とした解釈文書であるため、法的な建前上、医薬品専任のCDERが公式な発行元として名を連ねることはできないと推測します。しかし、CDERは、発行元には含まれていないものの、FDA全体の品質保証のイニシアチブに基づくものであり、そこで示されている「過剰なCSVからの脱却と、リスクベースのCSAテスト戦略への移行」という哲学は、FDA全体が支持する最新の品質保証アプローチであり、今後の大きな流れとなっていると思います。したがって、医薬品の製造や品質管理におけるシステムにおいても、このリスクベースのCSAの考え方を適用することは適切と考えます。

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます