リアルワールドデータ(RWD)がもたらすもの【第3回】
【第3回】リアルワールドデータ(RWD)にまつわる諸問題
はじめに
リアルワールドデータ(以降RWD)とは、現実世界に存在するさまざまな情報を意味している。医療においては、日々来院する患者さんの背景や症状に関する情報、実施された治療や処方された薬の内容などの情報がRWDにあたる。これらを分析することで、医療の実際の姿をある程度把握することができる。
RWDの利活用による研究は従来から実施されていたが、情報の収集範囲は限られていた。医療機関に所属する医師が自身の所属する医療機関に蓄積している医療情報を過去にさかのぼって調べるという方法である。近年では、民間企業、行政機関、研究機関の研究グループなどが、医療情報を集めてデータベースを構築し、他施設の研究者などにデータセットとして提供する仕組みができてきている。すなわち、研究を行う者は、所属する医療機関内の情報のみではなく、さらに多くの情報に基づいて研究することが可能となっている。
RWDはバラ色のようだが、問題もはらんでいる。端的に言うと「期待したものと違う」「目的に合ったものではない」という表現になるが、いろいろな要素を含んでいて、現状は複雑である。
1. RWDは出所がさまざまである
RWDの情報源はさまざまである。厚生労働省は、RWDの情報源には診療記録、レセプト、疾患レジストリ、製品レジストリ等があるとしている1, 2)。情報源のひとつであるレセプトとは、医療機関が、実施した医療について保険請求を公的機関に対しておこなうために提出する診療報酬明細書である。診療報酬明細書の記載要領は詳細に決められており、「傷病名」は統一された傷病名とコードを使って記述することとされている3)。このため、レセプトに記載された疾患名は、日常診療において医師がカルテに記載した診断名とは表現上一致していないことがある。医療機関としては、実施した医療についての保険請求の審査がスムーズに通ることが望ましい。そこで、例えばある症状に対してある医薬品が処方されていたら、その医薬品の持っている適応症に合わせて疾患名を入力する。適応症は、当該医薬品の添付文書等には記載されているものの、医師が診断名をカルテに記述するときには、特定の医薬品の添付文書の表現は考慮しないので、レセプトに適した表現になるとは限らない。
レセプトを情報源とする医療情報データベースは複数存在するが4)、これらに含まれる疾患名は上記のような理由でカルテの記載とは異なる可能性がある。このため、ある疾患に対するある治療の効果を分析しようとするとき、レセプトを情報源とするデータベースを使うと、分析対象を正しく抽出できない可能性がある。研究者はこのことを考慮した上でこれらのデータベースを使う必要がある。当該データベースの情報源や特性を把握した上でデータセットを取得して使わなければ、意図した分析はできない。
コメント
/
/
/
コメント