ゼロベースからの化粧品の品質管理【第62回】
―品質保証の実務と運用設計(No.2)―
前回は、規定や手順書が一応整備されているにも関わらず、実際の現場ではその内容が適切に実行されていないという事例を取り上げました。特に、現場の実態と乖離した規定・手順書が原因で運用に支障が出ているケースについて、どう進めれば“実効性のある仕組み”になるのかを解説しました。
その後、ある大手化粧品メーカーの方より、「大規模な汚染トラブルが発生した。これを契機に、設備(ハード)から見直し、社内基準や手順書の再整備を行いたい」というご相談をいただきました。確かに、ハード面の整備は一定の効果がありますが、コストも非常に高くなります。そこで、まずはソフト面(仕組み・運用)の見直しを優先的に進めることをご提案しました。しかし、その企業の方は「トップ指示で、あるべき姿をまず明確にしたい」との意向が示されたため、ゾーニングの確認や、その管理項目について説明を始めました。化粧品においては、医薬品のような“無菌性の保証”までは求められていませんが、製品に対する微生物汚染を含むリスクベースの管理が必要であることは言うまでもありません。
ところが、説明の途中で「その点はすでに理解している」とのご返答をいただいたため、詳細な解説は差し控え、「製品・工程ごとにリスクアセスメントを行い、現在の仕組みと運用が適切かどうかを確認すること」を提案しました。
当然、大手エンジニアリング会社が製造所を設計し、各種規定や手順書も整っているものと推察されますが、それでもトラブルが起こったという事実から、「仕組みそのもののアプローチが誤っているのではないか」という懸念は拭えません。
先の企業は大手化粧品メーカーでしたが、ここで改めて、中小企業でよく見られるGMP体制構築の誤りについて触れたいと思います。正直なところ、前述の大手メーカーでも同様の問題が起きている可能性があると考えています。但し、大手は人材・情報・資源が豊富であるため、別の要因が絡んでいる可能性もあります。
私たちが最終的に目指すべきは、「GMPに適合しているかどうか」だけでなく、
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